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"燃える氷"メタンハイドレートはエネルギー革命の推進役になり得るものか(後)
未来トレンド分析シリーズ
2013年8月22日 07:00

 そうしたなか、今後最も注目されるのは、メタンハイドレートの採掘技術に他ならない。井戸を掘ることで自噴する従来の天然ガスと異なり、メタンハイドレートは採掘技術を開発しなければ資源として活用できない。この点では、近年世界の注目が集まるシェールガスと同様に「非在来型」のガスと言える。
 永久凍土や海底下の低温、高圧の環境において、固体状で存在するメタンハイドレートをそのまま取り出すことは困難であり、メタンガスと水に分解し、メタンガスのみを効率的に回収する技術が必要とされる。日本、アメリカ、カナダ、ドイツの共同研究グループは2002年、カナダにおいて生産井を温水で温めて永久凍土層からガスを回収することに成功した。しかし、加熱のために膨大なエネルギーが必要であった。
 その後、生産井内に注入した水をくみ上げることで圧力を下げる「減圧法」が考案され、08年にこの方法で日本のMH21(メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム)がカナダと合同で実証実験に取り組み、成功を収めた。海底下にあるメタンハイドレートの温度を上げ、圧力を低くすることで、メタンと水を分離させ、メタンだけを回収する方法である。13年3月、渥美半島沖合で実施された海洋産出試験では、ポンプの不調や天候悪化によって実験は途中で終了せざるを得なかったが、6日間のガス生産量はカナダで行なった前回の実験の9倍にあたる12万m3となった。

earth2.jpg 日本発の技術に期待が集まるが、在来型天然ガスやシェールガスと比較してメタンハイドレートは個体を気体化する必要がある点で、生産効率面では不利である。しかも、現在の生産技術のままでは生産コストがシェールガスの40倍を超えるとの見方もあり、今後の技術開発によって一定量以上のガスを安定的に生産することで、採掘コストを引き下げることが欠かせない。
 と同時に、環境リスク要因として検討すべき課題もいくつか明らかになっている。具体的には、海底面からの生産ガスの漏えい、メタンハイドレートの分解時に発生する水の海洋放出、地盤沈下、海底地すべり等である。旧エネルギー基本計画においては、2030年までの原子力エネルギー導入の目標量を設定したものの、原発に関しては環境倫理面での問題を軽視した結果、大きな災害を引き起こしてしまった。

 こうした課題や反省のうえに立ち、メタンハイドレートからのメタンガス生産の技術が確立されれば、我が国にとって長期的なエネルギーの安定供給の確保が可能となり、自給力の向上に加え、LNG輸入交渉のカードとしての資源外交へのプラス効果も期待される。と同時に、メタンハイドレート生産の技術を在来型ガス開発にも適用することで、我が国の資源開発技術を向上させるのみならず、海外への技術移転にも役立つ可能性が生まれる。
 言うまでもなく、メタンハイドレートはまったく新しい資源であり、技術的には資源として使えるかどうかを探っている段階と言えるだろう。国産ガスとしてすぐにでも役立つような誤解を与えかねない報道もあるが、冷静な判断を欠かさず、その可能性を科学的に探求し、国家目標として着実な研究投資を行なっていくべき資源であることは間違いない。

(了)
【浜田 和幸】

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<プロフィール>
浜田和幸氏浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。


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