2012年度で創立80周年を迎えた大牟田商工会議所。民間企業の力をどう活かし、これからの大牟田市をつくり上げようとしているのか――。専務理事の服部和典氏に、現在の課題と今後の方針について、歴史を交えながら話をきいた。
<市民12万人全員が関心を持つために>
――今年2月、商工会議所で「大牟田市中心市街地グランドデザイン」を策定されていますが、どのような背景があるのでしょうか。
服部和典氏(以下、服部) 実は中心市街地活性化は、行政や地元の方々とともに20年近く取り組んでおります。大牟田市が計画しているのは国道沿いの100ヘクタールですが、そのなかでも北部に位置する40ヘクタールが問題として残りました。
最近では、まちづくり3法の存在意義が問われるほど、流通構造のなかでもとくに小売業にとっては大きな変化がありました。昔は「にぎわい」といえば商業のことで、中心市街地活性化のために商店街の方々も自らお金を出し合ってアーケードの整備などをしましたが、残念ながらマイナス要因の方が強く、結果としてはシャッター通りになっているのが現状です。
そうしたなか、商工会議所としては、この40ヘクタール部分を何とかしなければならないだろうということになりました。幸いにも、そのうち新栄駅前では地権者自らの手で再開発事業が起こされ、最終段階に入っています。そのためのお手伝いをしようということでグランドデザイン案をつくり、具現化が可能なものを関係者と議論を進めている最中です。
ここでポイントとなるのは、今までは「中心市街地のにぎわい=商業」でしたが、そういうかたちでのにぎわいづくりは率直に言って厳しいということです。そのため、別の切り口も含めて新たなにぎわいの顔になるものが必要です。たとえば、文化の発信を見直してはどうか、地域の資源をもう一度掘り起こしてはどうかなど、少子高齢化のなかで市民の方々がリピーターとなるようなものをつくることが大事ではないか、というのが今回の議論の核になっています。
もちろん、商工会議所と市がともに掲げる中心市街地活性化については、地域住民参加のもとに進めていきますが、街の顔となるためには、12万人の市民全員に関心を持っていただかなければなりません。そういう意味では、いろいろな階層の方に参加していただきながら、街づくりをしていこうと思っています。
――そのなかで「買い物弱者対策」などが取り組まれていますが、大橋克己県議は「行政にもう少しコーディネーターとしての役割を果たしてほしい」とも話されていました。
服部 つまるところ、中心市街地活性化とは「地域コミュニティを守ること」なのです。たしかに、大牟田市では買い物弱者が問題になっています。商業活性化協議会というもので、その問題も取り上げられました。
大橋県議もおっしゃっている「出前商店街」のほかに、行政の支援も受けながら地域住民の皆さんがお金を出し合い、医療から買い物までができるようにした「地域循環バス」や校区社会福祉協議会が中心になり、ある施設の送迎バスが空いた時間を利用し、その地域内で買い物できるよう循環させているコミュニティバスなどが起ち上がっています。
商業と地域コミュニティという観点で見ますと、生鮮三品が商業でのにぎわいづくりには欠かせません。そうしたお店が残らなければ、地域コミュニティは崩壊してしまいます。周辺に大型商業施設ができ、そうした生鮮三品のお店がなくなってしまったことも、中心市街地が活性化せず空洞化が進んでいる要因となっています。
若い世代の方たちと一緒に、我々や行政がバックアップしながら、地域コミュニティを立て直せるようなことをしていかなければなりません。買い物弱者対策に公共のコミュニティ施設を利用することも必要だと思います。もし何か問題があれば、我々の方からも行政に訴えてかけていきます。
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