1,900もの店が軒を連ねる西日本最大の歓楽街・中洲。多くの飲食店が集中する中洲2丁目に、なんと高齢者向けのマンションが建つ予定であることがわかった。主に小規模店で経営者の高齢化による閉店が続き、空いたテナントでの新規出店という世代交代の時期を迎えている今、引退した中洲OBの受け皿をねらってのものなのか。中洲関係者からは困惑の声も上がっている。
高齢者向けマンションの建設予定地は、中洲2丁目の国体道路と新橋通りに挟まれた区画にある。すでに工事が始まっているが、現場の標識からは建物の概要は記されていない。しかし、福岡市に提出された建築計画概要書によると、主要用途は「サービス付き高齢者向け住宅(診療所付)」。なお、建物の概要は、鉄筋コンクリート造の地上6階建て、全体の延べ面積は2,318.89m2となっている。
高齢者に優しいマンションが予定されているということになるが、興味深いのは建設予定地の周辺環境にある。飲み屋のテナントビルが隣接し、国体道路の向こう側は、風俗店がひしめき合う中洲1丁目。毎晩、多くの人が行き交う場所で、もちろん、その大半は酒が入った中洲っ子。とても「閑静」とは言い難く、お年寄りがのんびりと老後を過ごすようなところではない。「いくら高齢化と言っても、住む人間がいるのだろうか?」と、中洲のスナック経営者は訝しむ。
一方、仕事を引退した後でも、中洲に遊びに来る元気な高齢者も少なくはない。「酔っ払ってこけてケガをすることを考えれば、近場に住まいがあるほうがいいのかも」という声も。高齢化した常連客の中洲離れへの歯止めとなるのか。中洲に出現する高齢者向けマンションへの関心は高まる一方だ。
長丘 萬月 (ながおか まんげつ)
福岡県生まれ。雑誌編集業を経て2009年フリーに転身。危険をいとわず、体を張った取材で蓄積したデータをもとに、「歓楽街の安全・安心な歩き方」をサポートしてきた男の遊びコンサルタント。これまで国内・海外問わず、年間400人以上、10年間で4,000人の歓楽街関係者を『取材』。現在は、ホーム・タウンである中洲(福岡市博多区)にほぼ毎日出没している。
※記事へのご意見はこちら