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AIが生み出す無限のビジネスチャンス!~「クラウドからAIへ」小林雅一著(朝日新書)
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2013年8月29日 14:28

<機会と人間の関係を新たな局面へと導く技術!>
 AI(Artificial Intelligence:人工知能)が完全に復活した。最近話題となっているアップルの音声アシスタント「Siri(シリ)」、グーグルの「セマンティック検索」そしてフェイスブックの「グラフ検索」などもすべてこの生まれ変わったAI技術に立脚している。

 小林雅一氏は、KDDI総研リサーチフェローでメディア・IT・コンテンツ産業の調査研究における日本の第一人者である。小林氏は、我々は今後10年間で急速に発展するであろう、AI革命「機械と人間の関係を新たなフェーズ(局面)へと導く技術」の入口に立っていると言う。

 AIは古くて新しい技術だ。その研究開発は1950年代に始まり、文法のようなルールをコンピュータに植え付けるという当初のアプローチが限界に達し、70年代から90年代にかけて「AIの冬」と呼ばれる低迷期を何回か経験した。ところが、1990年代の後半に入り復活、AIは、統計・確立的な手法や脳科学の最新成果を導入することによって非常に融通の利く現実的な技術へと生まれ変わった。

 本書には、なぜ今、AIが産業の表舞台に再登場してきたのか?その技術的ブレークスル―をもたらしたものは何か?過去と現在のAIとでは何がどう違うのか?新たに生まれ変わったAIは、どのようなビジネスチャンスをもたらしてくれるのか?あるいは逆に、どのような問題と危険性を抱えているのか?などが分かりやすく解説されている。

 昨今の流行語である「ビッグデータ」は、実は「AI(人工知能)」と表裏一体の関係にある。大量のデータ自体に価値があるというより、それを上手く解析して、いかに企業や生活者にとって新たな価値を創出できるかが主眼になっている。

 いわゆる「ビッグデータ」は2種類に大別される。1つは、「構造化データ(structured data)」(企業が保有する大量の顧客情報や売上データ、政府機関や公共団体が保有する各種の統計情報やデータベースなど)である。他の1つは、「非構造化データ(unstructured data )」(ブログやSNS、Twitterなどソーシャル・メディアに投稿される無数のコメントや写真、さらに各種センサーを搭載した様々な機器や装置から上がってくる計測データなど)である。

<ビッグデータの肝は「非構造化データ」である!>
 後者の「非構造化データ」は過去と比較にならないペースで爆発的に増加している。そして、このような人間の心、情動などの非構造化データこそが、現代を象徴する「ビッグデータ」の肝なのである。これらを解析するには、AIの持つ「自然言語処理」、「画像認識」、「音声認識」、「機械学習」などの高度な技術が必要なのである。そして、アップル、グーグル、フェイスブックの次なる主戦場はここになっている。

 「ビッグデータとAI」を巡る天下分け目の戦いで、今一番有利な立場にあるのはグーグルである。グーグルには、通称「グーグルX」という秘密研究所がある。そこでは、(1)「自動運転車」(ロボット自動車)(2)「グーグル・グラス」(AR拡張現実メガネ)」や荒唐無稽とも思える(3)「宇宙エレベーター」(ロケットを使わずに宇宙に行くことができる)などを含めて常時100本のプロジェクトが走っている。
 すべての技術革新には「明」と「暗」がある。小林氏はAIが浸透したことによって起こる問題点を2つ挙げている。1つは、人間が機械システムに依存し過ぎることの危険性、ほかの1つは、人間が機械システムに雇用や存在価値を奪われる不安である。

 今や最先端の科学技術は一般大衆の理解が遠くおよばない世界で展開し、科学者の知的探究心に駆られた研究開発は常に暴走の危険性を孕みながら急速に進んでいる。私たちが今後、科学技術とどう向き合っていくかはとても重要な問題になってくるのである。

【三好 老師】

<プロフィール>
三好 老師(みよしろうし)
 ジャーナリスト、コラムニスト。専門は、社会人教育、学校教育問題。日中文化にも造詣が深く、在日中国人のキャリア事情に精通。日中の新聞、雑誌に執筆、講演、座談会などマルチに活動中。


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