国際リニアコライダー(ILC)誘致のための活動をしている研究者組織ILC戦略会議は23日、ILC候補地に北上山地を強く推すとの結論を発表した。同会によると、技術的観点から、北上山地の方が脊振山地以上に優位性があるということだ。評価点にすると北上山地68点~63点、脊振山地46点~37点(必須要件を満たすという条件のもとでの評価点。階層評価法を用いたとのこと)。大いに北上山地に差をあけられることとなった。
その理由の主なものは、直線距離を十分に確保できるか否かなどといった、立地的な条件によるとしている。具体的には、北上山地は直線50km確保したとしても、その上には大きな施設などがほとんどなく(民家が200軒ほどある程度)、地盤も花崗岩地域がほぼ全域を占めており安定性が高い。もっとも密接した断層もルートから20km離れた場所にあるだけ。したがって安定性が高いと結論。
一方脊振ルートは次のとおり。市街整備区域などがあるため、準備期間のリスクが生じる。ダム湖の地下を通過するため、ダムの機能保全、トンネル施工、運用の各方面で困難が予測される。ルート東端5kmの周辺に日向峠-小笠木峠断層の手前で、断層が多数見つかっていて注意が必要。ルート直上に民家が密集しているエリアがある、ということだ。これにより、コストが増す可能性や工事期間がいたずらに伸びるリスクがあるとしている。しかるに、ILC戦略会議は北上山地を強く推奨する、という結論に至ったという。
それを受けて、北部九州を中心に35万筆もの署名を集めた「九州へのILC誘致を実現する会」事務局長の岩木勇人氏は「とても残念な結果ではあるが、これが最終結論ではない。まだまだ可能性があると信じている。署名をしてくださった方々にいい報告ができるように、これからもあきらめずに邁進していきたい」と語った。
ちなみに、社会環境基盤評価(居住性など)は、北上キャンパスが60点(A案)51点(B案)であるのに対し、脊振キャンパスが63点(A案)、55点(B案)ととても僅差ながら脊振側に軍配が上がっている。
まだ最終的な結果は出ていないとはいえ、一定の権威が認められた諮問機関による評価が下されたことに違いはない。逆転への道は残されているのかはわからないが、最終的な結論が出されるまで、脊振山地誘致への夢は捨てず見守っていきたい。
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