電力小売り自由化を視野に、新電力を巡る動きが活発化している。東京都では、10月より新たに都内の271施設に新電力を導入することを決定。大手電力会社の独占体制を打破し、新電力を交えた電力市場の活性化を目指す。
中部電力は、三菱商事から新電力「ダイヤモンドパワー」を買収し、東京電力管内の首都圏で企業向けの売電を開始する見込み。電力市場の競争が、この10月に本格化する。
日本製紙では、火力発電所を新設し、自社での電力使用をまかなうだけでなく、売電事業にも乗り出す。静岡県富士市に火力発電所を新設することで、規模では、一躍、エネットに次ぐ新電力第2位に躍り出る。
電力市場の活性化、今後の小売りの自由化へのステップとして、欠かせない勢力となる新電力。しかし、非常時の安定した電力供給力が足りないなど課題も残っている。
<3・11後に脚光>
新電力、いわゆるPPS(特定規模電力事業者、新規参入事業者)とは、既存の大手電力会社以外に、新規に参入した電力会社のこと。2000年の改正電気事業法で、電力の小売りの部分的な自由化が実施され、05年に契約電力が50kW以上なら、既存の電力会社から新電力へ切り替えられるようになった。
契約規模を満たせば、ほかの地域の電力会社や新電力から選択して、供給を受けることができる。工場、ビル、学校、デパートなどで新電力と契約し、コスト削減に成功した例が出ている。切り替えのハードルは、下がってはいたが、まだ市場の活性化とまではいっていなかった。
NTTファシリティーズ、東京ガス、大阪ガスが2000年に設立したエネット、丸紅、昭和シェル石油などが新電力として市場に参入した。12年、夏の節電の呼びかけ時に注目度が上がり、ここにきて、その役割は、重要度を増している。電力の小売り自由化から発送電分離へと続く電力システム改革の担い手となることが期待されている。
商社系だけでなく、民間企業で、電力市場に参入する企業も増えてきている。日本製紙は、静岡県富士市に、中部電力と三菱商事が出資して設立した新電力ダイヤモンドパワーと共同で、火力発電所を新設。売上高では、年間500億円を見込んでいる。
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