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中国をより知るために見ておきたい映画(1)~「北京ヴァイオリン」
社会
2013年8月30日 15:04

 異国文化や情勢を知るための有効な手段として「映画を見る」という方法が挙げられる。「中国を知る」ためにどのような映画を見れば良いのだろうか・・・。中国でヒットした作品、あるいは、現地の有識者が推薦する名作映画をご紹介する。ピックアップする作品は日本の大手レンタルDVDストアでも入手可能だ。

 北京などの大都市に出て生計を成そうという中国の地方出身者は少なくない。しかし、「北京戸籍」が無ければ安定した仕事は得られず、「人脈」などの後ろ盾無しにしては、生活は厳しいものとなる。集合住宅の狭い地下部分に共同で住まざるを得ないような苦しい生活を強いられている若者もいる。

 北京ほど「経済勝者」と「経済弱者」の差を歴然と感じる都市もないだろう。オリンピックや経済発展に乗じて、人生を軌道に乗せた者は、華やかな生活を送る。一方で、チャンスを掴めないままの人間は、プライドを捨てきれず、故郷に帰ることもできず、北京で質素な生活を送る。「隙あらば自分を容赦なく売り込む」というのは、北京のみならず中国大陸の大都市で見られる光景だ。映画『北京ヴァイオリン』も、そういった中国人の生き方の「モデルケース」が描かれている。田舎から出てきて、バイオリンの才能のある息子を売り込む父親の物語だ。

『北京ヴァイオリン』

北京ヴァイオリン 2003年中国公開。中国映画界の巨匠、陳凱歌監督の作品。原題は「和你在一起」で、邦題に使われている「北京」や「ヴァイオリン」の意味は含まれていない。

 中国北部の田舎町。男手一つで一人息子の小春を育てる劉成は、母親の形見のバイオリンを巧みに弾く息子の才能に賭け、一流の演奏家に育て上げようと、小春とともに北京にやってくる。名のある教授に指導を無理やり頼み込み、指導料を稼ぐために北京で身を粉にして働く父・劉成。音楽の才能を持つ小春の役は、実際にバイオリンのコンクールでも上位に入賞している唐韵が演じた。小春の父、劉成に、中国大陸でも屈指の実力派として知られる劉佩琦。劉は作品の中で「田舎出身者」のテイストを完全に演じきっている。

 人脈を得るため売り込もうと必死な父子の姿は、まさに中国社会の縮図。『北京ヴァイオリン』は北京で成功を見つけるための田舎出身者の群像を感じ取れるとともに、バイオリンの音色とともに酒を飲みたくなる、そんな優雅な作品でもある。

■主なキャスト
唐韵(バイオリンの才能を持つ小春役)
劉佩琦(息子のために奔走する父親・劉成役)
陳凱歌(小春にバイオリンを教える余教授役/作品の監督を務めるが自らも出演)

【杉本 尚丈】


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