日本マクドナルドホールディングス(HD)は、"ポスト原田"に向けて動き出した。日本マクドナルドHDの原田泳幸会長兼社長(64)は8月27日、傘下の事業会社、日本マクドナルドの社長を退任した。後任の社長兼CEO(最高経営責任者)には、マクドナルド・カナダの女性幹部、サラ・L・カサノバ氏(48)が就任した。
原田氏は持ち株会社HDの会長兼社長と事業会社の会長にとどまる。これまで1人4役をこなしていたから、役職が1つ減っただけに見えるが、そうではない。中核である事業会社、日本マクドナルドの社長兼CEOの座を明け渡したことは、次の原田時代へ向けての布石と受け取られる。2013年12月期の株主総会で、持ち株会社HDのトップ交代は秒読みに入ったといえそうだ。
<新社長はカナダ出身の女性>
日本マクドナルドHDの発表資料によると、サラ・L・カサノバ氏は1965年4月、カナダ生まれの48歳。90年12月、カナダのマックマスター大学大学院経営学修士課程を修了。91年1月、マクドナルド・カナダに入社した。出身地のカナダのほか、ロシアやマレーシアなど6カ国でマーケティングを担当してキャリアを重ねてきた。
日本では04年10月から5年間、原田氏の部下として、日本マクドナルドの執行役員マーケティング本部長と事業推進本部長を歴任。「えびフィレ」や「メガマック」などのヒット商品を手がけた。直前までマレーシア・シンガポール地域の責任者を務めていた。
カサノバ氏は、原田氏と同じくマーケティング畑を歩いた。マーケティングとは、市場動向を読み、製品・価格・広告・販売・経路について立案すること。マクドナルドは世界118カ国・地域で店舗を展開しており、カサノバ氏は世界各国でマーケティングを担当して実績をあげてきた。
原田氏は「最適な人材」として後継に指名した。カサノバ氏のグローバルなマーケティング手法や新しい商品を投入し、日本マクドナルドの再建させることが期待されている。
<マーケティングの手腕を買われてマックのトップに>
社長交代の理由は、原田氏が最も得意とするマーケティングが不発に終わり、業績悪化を招いたことにある。原田氏をマクドナルドの経営トップに押し上げたのは、マーケティングの手腕にあった。
原田氏は外資系を渡り歩き、マーケティングの手腕を磨いてきた。90年アップルコンピュータ・ジャパン(現アップル)のマーケティング部長として入社。日本法人社長に昇格。米国本社の副社長として、世界市場を相手にマーケティングを担当した。
そのマーケティングの手腕を買われ、米マクドナルド本社にヘッドハンティングされた。アップルの主力製品マッキントッシュの愛称がマックだったから、この移籍は「(コンピュータの)マックから(ハンバーガーの)マックへの華麗な転身」と話題になった。
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