異国文化や情勢を知るための有効な手段として「映画を見る」という方法が挙げられる。日本では「韓流ドラマ」も多く放送されているが、映画には歴史的背景や伝統的な文化、風俗が色濃く反映されていることが多い。
「韓国を知る」ためにどのような映画を見れば良いのだろうか・・・。韓国でヒットした作品、あるいは、韓国人有識者が推薦する名作映画をご紹介する。ピックアップする作品は日本の大手レンタルDVDストアでも入手可能だ。
自閉症の青年が、「走ること」での才能を開花させ、フルマラソン大会に挑む姿を描く。ひたむきに努力する主人公の青年、自閉症の息子を持ち苦悩する母親、青年との出会いにより失いかけていた情熱を取り戻すコーチ。実話を基に制作された作品だ。「マラソンの練習」を通じてさまざまな人間の感情、葛藤が映し出されている。
2005年公開の韓国映画で、韓国の映画賞「大鐘(テジョン)賞」(韓国のアカデミー賞とも呼ばれる)で最優秀作品賞、最優秀主演男優賞(チョ・スンウ)を受賞。自閉症の青年を演じきったチョ・スンウの演技力には、高い評価が寄せられた。
この作品は、実在する自閉症の青年、ペ・ヒョンジンさんの実話が基になっている。フルマラソンを3時間以内で完走したヒョンジンさんの物語は韓国人の誰もが知っているとされる。多くのシーンが「マラソンの練習シーン」、時に、レースのシーンも盛り込まれるが、臨場感を出すため、製作チームは実際のマラソン大会を開催している。「インチョン・ソンド・マラソン大会」は、1,300人のマラソンランナーたちがレースに参加している。豊富なレース内でのシーンは、大会そのものを開催してしまうことで撮影できた。
また、作品のクライマックスである「春川(チュンチョン)国際マラソン大会」だが、実際の大会のなかで撮影された。海外からも含め6万人が参加する大会に、空撮も含め撮影スタッフたちが配置され大がかりなロケが敢行。景勝地・春川は『冬のソナタ』のロケ地になったこともあり、マラソン大会(朝鮮日報が主催)も人気が高い。ちなみに2013年の開催は10月27日の予定だ。
大がかりな撮影も行なわれた作品だが、ストーリーそのものはシンプル。青年の努力と家族の情愛が描かれ、幅広い年代から支持を受けている。
■主なキャスト
チョ・スンウ(自閉症の青年ユンチョウォン役)
キム・ミスク(青年の母親を演じた実力派女優。ドラマの出演も多く、韓国ではラジオDJとしても活躍している)
イ・ギヨン(青年のマラソンコーチ役)
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