<市場活性化よりも安定供給>
ただ、一方で、新電力には、供給力など課題も多く、現時点で、過度に信頼するには不安点も残っている。自治体のエネルギー政策担当者のなかには、「新電力のシェア拡大、育成は小売り自由化に向けて、当然、踏まなければならないステップ。東京都が先駆けてやってくれたので今後、やりやすくなる」と東京都の動きを評価する意見がある一方で、「猪瀬知事の政治的パフォーマンスにすぎない」との否定的な見方もある。「新電力にしてみたら、東京都がみんな買ってくれたらおいしい話ですよ。東京都による買い占めみたいなもの。4月以降、営業をやめた新電力もある」と語る。
新電力の普及、シェアの拡大は、自由化していく上で避けては通れない道。導入拡大には、民間企業だけでなく、各自治体の動きもカギを握るが、ある自治体のエネルギー政策担当者は、「長期的な視点で見れば、競争が始まった方がいいとは思う。しかし、行政マンとして仕事をする際に、どうしても、安定供給、緊急時の復旧の早さを重要視しなければならない。東京都のようにお金があったり、規模が大きい自治体は、新電力を導入するなど市場を活性化したり、これまでとは違った供給先と契約したりする方向に動けるかもしれないが、緊急時対策を考えると現状維持が精一杯で、新しいところと契約するなどのリスクを取れない」と語る。
<行政側の理想と現実>
現時点では、新電力を含めた電力市場が今後どう動くのか、市場動向を注視するにとどまる自治体が多い。
首都圏のある自治体のエネルギー政策担当者は、「新電力を導入し、市場競争が始まるのが理想だが、行政の裏方として、競争バンザイとばかりは言ってられない。供給力、経済性、安全性...もっと分析しなければならないことが多い」と語る。
政策を推し進める側としては、都市部も地方も共通して、電力を安定して供給するということが至上命題。それ以上でも、それ以下でもない。風力などの自然エネルギーの導入も増えるに越したことはないが、増やしすぎたことによって安定供給ができなくなるリスクを、行政側としては重くみてしまうようだ。
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