<課題も多い新電力>
市や区など、1行政区としては、新電力に安定して供給する力があるのかどうか、経済的メリットについても分析しなければならない。ある自治体の担当者は、「新電力と契約してコストを削減するよりも、節電の方がコストダウンに直結する。有権者の声に応えるためには、ムダ使いをなくす方が先」と語る。
<供給力には疑問符>
供給力に疑問を持つ声もあった。「東京都が新電力を取り入れました。どこどこの市や区も取り入れました。だからと言って、飛びつくのか。みんながみんな飛び付いては、新電力としてもすべてに供給できないし、エネルギー担当の行政マンとしては、それでは、分析が足りない。有事の際に、対応できるのか。非常事態が起きた時に、すぐに電力供給をできるのか。これをクリアできるようになるまでは、取り入れるのは、リスクもある」と、慎重な姿勢を見せる。
新電力は、電力消費量の波が少ないところであれば、供給しやすい。これまでの事例として、学校、サービス業など、電力消費に波がないところが成功している。新電力を取り入れて成功の多い学校、サービス業にとって、経済的なメリットはあるものの、電力消費のピーク時や緊急時の安定供給など乗り越えなければならない壁はまだ高い。
「仮に東京電力が値上げすれば、新電力も自動的に値上げすることができる。経済的に本当にメリットがあるのか、今のところ、もう少し市場動向を見守る姿勢」と、経済的なメリットにも疑問符は付くようだ。既存の大手電力会社と新電力が健全で五分の市場競争を行なえるようになるまでの道のりはまだ遠い。東京都がやっているような、新電力をどのように育成するかが電力市場の未来を変えることになる。
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