<そっくり?な相関図>
先日、ある会合で西日本シティ銀行(NC)の行員と顔を合わせる機会があった。若く見えるが、とある支店の融資課長。おそらく出世は早いほうだろう(聞くところによると、同期では5本の指に入るスピード出世組という)。
そのNC行員は、筆者がデータ・マックスの所属と知るや、開口一番「さかえ屋の記事読みました。やりすぎですよね。で、あれはUさんのことでしょ?」と尋ねてきた。個人情報保護に重きを置く流れのなか、企業調査における銀行取材も基本的にNGのご時世である。情報漏えいを嫌い、情報会社との表立った接触を避けたがるのが若手行員の姿勢であると筆者は認識していた。だが、当のご仁はあれやこれやと探りを入れてくる。その情報収集欲の旺盛さに驚かされつつも、このご時世でも優秀な銀行マンは優れた情報マンなのだなとの印象も抱いた。
その数日後、「さかえ屋」の案件に登場したNC の面々を、人気ドラマ『半沢直樹』のキャストになぞらえた見解を別の人物から示された。書いてもらった相関図を眺めてみると、似ているような、そうでもないような...。思い切って先のNC行員に電話で意見を求めたところ、「粉飾決算や多額の貸し付けを回収すると倒産してしまう点は、作中の伊勢島ホテルと同じ。Yさんも回収と再建の狭間にあるので、半沢直樹と言えなくもないですが...」と、やや苦笑気味のご様子。ただ、「多くの人間が関わった多額の融資案件の顛末は、大なり小なり責任のなすり合いですし、自然と似てくるのも仕方ないかも」と、意味深なコメントも残した。
※右上の図は、さかえ屋とドラマ『半沢直樹』を比較したという相関図(一部加工)。イニシャル部分は過去記事(関連リンク)を参照。
<さかえ屋の「盾」となれるか>
ところで、新体制の発足から5カ月を経たさかえ屋の状況はどうなっているのか。この間、トモスのチョコ菓子の一部がさかえ屋の工場で製造されたものに差し替わった事実や、トモスの店舗でさかえ屋ブランドの商品が売られている事実が確認されている。逆に、トモスの商品がラベルを換え、さかえ屋の店舗で売られているケースも見受けられた。内部的にも、比較的新しいさかえ屋の生産設備をトモスが積極的に活用している模様で、トモスがさかえ屋を傘下に収めたことによって、両社の距離が急速に縮まったことは間違いない。
ただ、これがさかえ屋の業績アップと再建に直接的に繋がるかというと、必ずしもそうはならない。先の事実を例に取ってみると、さかえ屋からトモスに商品を卸す際の卸値やトモスの商品をさかえ屋が購入する際の仕入れ値が、利益を取れるだけの価格帯に設定されているかの検討が欠かせないからだ。買収された側は往々にして力関係が弱く、親会社やグループ中核会社の意向が強く働いてくる。そのため、買収後に食い潰される事例も少なくない。
もちろん、トモスの側も出資することでリスクを背負っている。傘下に収めた企業の処遇について、他からとやかく言われる筋合いはないとの見方も成り立つだろう。しかし、本件はさかえ屋の再建を前提に各金融機関から債務カットを受け、創業家からすべてを召し上げたうえで今の体制に落ち着いた経緯をもつ。そして、これを主導して絵を描いたのは、他ならぬNCであった。出資者であるトモスの意向を尊重しつつも、さかえ屋を守り抜く「盾」となり、再建させる責任がNCにはある。
▼関連リンク
・さかえ屋・中野氏に第三者破産、録音記録が示す西日本シティへの疑念(1)
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