2013年2月に市制50周年を迎えた北九州市。その間、ものづくりのまちとして著しい成長を遂げ、近年では「公害を克服し、グリーン成長に取り組む近代的な産業都市」(OECDレポート)として、世界から注目を浴びる。一方、産業構造の転換による若年者の減少で、政令指定都市のなかでは最も高齢化が進んでいる。北橋健治・北九州市長が描く次なる半世紀とはいかなるものか。インタビューに加え、医師らとの誌上鼎談も交えながら、北九州市の今と未来を聞いた。
<産業版「スマコ」、先鞭をつけられるか>
――温暖化への懸念を背景に、技術を活かす次なる場としても位置づけられる環境分野。「スマートコミュニティ(スマコ)」をはじめ、北九州市は国内外の先頭グループを走っていますね。
北橋健治氏(以下、北橋) 低炭素社会の実現に向けての高い目標を掲げ、「環境モデル都市」の認定を国から受けたのは2008年でした。その行動計画である「北九州グリーンフロンティアプラン」におけるリーディングプロジェクト、それが「北九州スマートコミュニティ創造事業」です。国が選定した「次世代エネルギー・社会システム実証」を行なう4地域(北九州市、横浜市、豊田市、京都府)の1つとして、八幡東区の東田地区において、効率的で社会コストの削減を目指したエネルギーマネジメントの実証を行なっています。
――近代製鉄発祥の地(官営八幡製鐵所)である東田地区が、100年の時を経て、再び重責を担うのは象徴的です。どのようなデータが得られていますか。
北橋 昨年度は、「ダイナミックプライシング」の社会実証を実施しました。電力需給が逼迫する時間帯に電力料金を一時的に変動させることで、地区内の電力需要を調節する仕組みなのですが、夏季・冬季ともに約20%の節電効果があるとの実証結果が得られました。ここでの研究成果や技術を、被災地である岩手県釜石市やインドネシアのスラバヤ市などで展開する計画が進められていますし、今後も国内外に広く普及させていきたいと考えています。
――エネルギー関係では、新たな取り組みも始まったそうですね。
北橋 東日本大震災以降、エネルギーに対する関心が高まりを見せていますが、本市でも、エネルギーの確保は「都市の生命線」とも言える重要な課題であると捉えています。市民や企業が安心して生活し、事業活動を行なうために必要となるもの、それは地域独自のエネルギー拠点の形成と、既存エネルギーの効率活用ではないでしょうか。こうした考えの下で策定されたのが「響灘スマートインダストリ構想」です。さまざまな産業が立地する響灘臨海地区において、再生可能エネルギーと基幹エネルギーを活用し、なおかつ、「北九州スマートコミュニティ創造事業」の成果を活かしながら、地区全体でエネルギーを賢く使う「産業版スマートグリッド」を構築することとしています。
――話は変わりますが、響灘臨海地区には資源循環の国内最大モデル「北九州エコタウン」があります。近年は「都市鉱山」とも評され、レアメタルのリサイクルに注目が集まっています。
北橋 最近では、自動車やIT製品などの製造に欠かせない素材であるレアメタルの確保が国家的な課題となっており、本市としてもレアメタルのリサイクルを重点分野に掲げています。そのようななか、エコタウン内に立地する日本磁力選鉱(株)(本社:北九州市小倉北区、原田光久社長)が、九州で唯一、国から小型家電リサイクル法の認定事業者として第1号認定を受けたことは、本市にとっても嬉しいニュースでした。しかも同社は、本市のアジア低炭素化センターと連携し、世界で初めてインドからバーゼル条約に従って、廃プリント基板の輸入をスタートさせています。アジアの資源リサイクル拠点を目指す本市としても、市内企業への一層の支援を通じて、レアメタルリサイクル事業の拡大を図っていきたいと考えています。
<プロフィール>
北橋 健治(きたはし・けんじ)
1953年3月生まれ。86年7月に衆議院議員に初当選。以来、94年に大蔵政務次官。96年運輸委員会筆頭理事。98年衆議院環境委員長。99年大蔵委員会筆頭理事。2005年地方制度調査会委員。06年行政改革特別委員会筆頭理事などを歴任し、07年2月に北九州市長に初当選。現在、2期目。
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