<原発事故の事後処理の遅さも背景に>
3・11の原発事故以降、ようやく進み始めた電力改革。本当を言えば、当の昔に実行されていてもおかしくなかったはずの電力小売り自由化。東京都が271施設を新電力に切り替え、中部電力が首都圏で売電事業を開始するこの10月が、電力改革へのひとつのスタート点となる。
脱原発、発送電分離については、「改革を進めようとしているのはポーズだけ。発送電分離については結局うやむやにするのでは...」との見方もあるものの、東京都がリードし、地域独占を崩し、自由競争をしていこうという兆しは見えてきている。
原発事故と、その後の対応の遅れ、事後処理、汚水漏れ問題などによる東京電力の信頼の失墜もその背景にある。
<国が長期的ビジョンを>
自治体のエネルギー政策担当者を取材していて、1950年代から続いた原発推進時の方向性を示すやり方について、方向性を示した点のみにおいて評価する声もあった。「国による現在の原発推進を評価するわけではないが、原発推進の際のガバナンス、統治のやり方、ビジョンを示すやり方はしっかりしていた。原発事故後2年半経って、現政権がエネルギー政策の大幅転換に舵を取るとは思えないが、現政権のやり方も、その場その場をしのぐやり方のように感じる。ガバナンスは大事」。
向かうべき方向を間違ってしまっては、元も子もないが、エネルギー戦略に関して、50年、100年後を見据えた国民的な議論を展開し、その後に国は長期的なビジョンを示すべきなのではないか。
持続可能なエネルギー政策を行なっていくには、50年、100年の計画が必要だ。国が主導し、エネルギーのビジョンを描くのがエネルギーシフトの現実的なあり方だろうが、安倍政権の描く成長戦略では、100年先を見た長期的な計画はまだ見えてこない。
「国が明確なビジョンを描くしかない。国が長期的なエネルギー政策を作るべき。50年、100年の長期的な計画。それが見えないのでは、1自治体としては、どうしようもない」。
地域によって、エネルギー事情は大きく変わる。何年かけてやるのか。誰が、未来図を描くのか。新電力を巡る電力改革が動き始めたが、国は、未来図を提示し、具体的なロードマップを示すことができるのか。
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