<風力発電所など環境政策に力>
東京・江東区には、もう一つ、自然エネルギーで、「日本一」がある。臨海部の若洲公園にある若洲風力発電施設だ。自治体が所有している風力発電の規模としては、1基の風車の大きさ(約100メートル)で日本一。ドイツの企業から購入した風車だ。
この風車は、臨海部にあり、荒川河口を挟んで葛西臨海公園があり、その東側に東京ディズニーランド。JR京葉線、りんかい線の車窓からも見ることができる。
成田勇臣・同区温暖対策課長は、「コンスタントに発電量が上がっている。東電に売電していて、固定買取価格での売電になり、2012年度は4,152万円の売電収入になっている」と、07年に設置された風車は、海から吹く風で回り、そこそこの売電収入を生み出している。
<ゴミ問題と戦ってきた自治体>
江戸時代から、東京(江戸)で出たゴミの処分所として、現在の江東区は、ゴミに頭を悩ませてきた。高度経済成長期には、大量消費のもとに、未処理のゴミが大量に廃棄されるなど、ゴミ問題は、江東区、杉並区などを巻き込む社会問題となった。
「環境」「自然」に対する思いは、より一層強い。臨海部に東京都が所有していた清掃工場を、立地区である江東区に移管した。1994年に新江東清掃工場を作り直したが、この時に、東京都から清掃工場の立地区還元経費として約90億円が江東区に支払われ、この一部を使って設置したのが、若洲風力発電施設だ。
「臨海部の端にあるので、わざわざ見に行く人は少なかったが、最近、東京ゲートブリッジができて、目立つようになった。この風力発電施設を見に行く人も増えてきている。子どもたちに実際に見てもらって、風力発電とはどのようなものか知ってもらうのに役に立っていると思います」と成田課長。
環境対策の先進的な地域として、小水力、風力など自然エネルギーとの関わり合いを作り、次代を担う子どもたちへの「環境教育」に力を入れてきた江東区。しかし、地域で使う電力をまかなうための「発電」という意味でこれを見た場合、規模は小さく、江東区全体で使うエネルギーを補えるほどのものではない。
富山県などでは、地域のエネルギーをまかなうものとして水力発電を積極的に取り入れる動きが出ているものの、まだ全体で見ると、これも、小さな流れにすぎない。地域で使うためのエネルギーを、自然エネルギーを利用して「生産する」という大きな潮流は、今後、できてくるのかどうか。
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