<出場団体が地域におよぼす効果>
対馬とんちゃんは、対馬市北部上対馬の比田勝周辺に発生した郷土料理的なものでした。これを地域活性化の起爆剤として地域商品化し、その結果、「B-1グランプリ in 北九州」でヒットし、その効果は対馬市南部の下対馬へもおよぶような様相を見せ、対馬市全体の活性化に寄与するかに見えました。しかし、ことはそう簡単ではなかったようです。
「比田勝に来てとんちゃんを食べてほしい」というとんちゃん部隊の想いと、「せっかく有名になったんだし、対馬に来た人みんなが気軽に食べてもらえるようにしたい」という南部下対馬市民の意向が食い違いつつあるようです。
南部でもとんちゃんを提供する店は増えているようですが、本場比田勝の肉が下ってこないため、本場ものでないとんちゃんが南部で売られているとの風評もあるらしいのです。
南部の人がとんちゃんの盛り上げに協力しようとして、各種イベントで提供したり、島外への販路開拓をしたりしても、北部の市民に言わせると、「余計なことを...」ということになるらしいのです。
地域商品のブランド化による地域のアイデンティティ形成の難しさが伝わってきます。
また、北部にしてもとんちゃんで町中が潤っているかと言えば、そうでもないようです。もともとボランティアで勝手連的にPRを始めた商品だけに、相変わらずボランティア運営は変わらないそうで、潤ったのは一部の業者さんだけ、という評価も。加工品製造を活発にして地域産業化し、地元雇用に貢献しようという動きも見られないとのこと。
とんちゃん関連商品の地域商品化、プロモーションのあり方、イベントにおけるPRのあり方、体制づくりと課題は多いようです。今後の方向性について、ここは行政の出番だと思いますが、さあ、対馬市はどういう対応をとるのでしょうか。今後が注目されます。
(株)地域マーケティング研究所
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和歌山大学産学連携・研究支援センター客員教授、観光学部フェロー
西日本工業大学デザイン学部非常勤講師
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