《2020年東京オリンピック決定》を耳にして、経営者は様々な反応を示したであろう。「あー、やはり、東京に営業所を構えていて良かった」と万歳する社長も目に浮かぶ。「今後、10年間ますます東京の1人勝ちが進む」と溜息をついている人の顔も想像できた。
A社の社長の場合は喜びとボヤキが交錯する。東京オリンピック開催には交通機関の充実、首都高速道路の新設・補強が必要だ。実現するために1兆円の資金が投入される。この動きを眺めながらA社長は、「この7年間、東京で毎年10億円、累計70億円の受注が見込める」と試算した。内心、小躍りしたそうだ。
ところが冷静になって考えると、厄介な問題が立ち塞がっていることに気づいたのだ。昨年秋からA社長は、東京湾岸に5,000坪の作業場を確保するために用地を探していた。坪250万円として12億円から13億円の予算組みをしていたのである。条件ピッタリの不動産が見つかり10月初め入札だ。しかし「オリンピック決定で地主も市場環境も強気になった。一番札に最低15億円提示しないと勝負にならないと読んでいる。最悪20億円になるのではないか」と溜息をついているのだ。
贅沢な呟きである。
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