東京五輪の開会式は2020年の7月24日。その時、政権の座に就いているのは誰だろうか。
自民党の総裁任期は最長で2期6年だ。たとえ安倍首相が次の任期いっぱい首相を務める場合でも、自民党の党則上は7年後の五輪の開会式には違う首相が席に着いていることになる。
ポスト安倍に名前があがる石破茂・幹事長や麻生太郎・副総理なのか、あるいは自民党のホープ、小泉進次郎氏まで一気に若返っているのか。もちろん、その頃、野党に政権交代している可能性がないとはいえない。
ところが、招致決定以来、自民党の安倍シンパ議員たちの間では「安倍10年長期政権説」が強まっている。
「長期政権には運が必要だが、総理は強運の持ち主だ。次の総選挙はおそらく3年後の衆参ダブル選挙になる。それに勝利して憲法改正を実現すれば、その功績で党則を改正して任期延長し、超長期政権が見えてくる。五輪の開会式に安倍首相が座っていることも考えられる」
いささか贔屓の引き倒しではあるが、安倍首相が強運の持ち主であることは間違いない。
昨年の総裁選では議員票、党員票ともに次点だったにもかかわらず、奇跡の返り咲きを果たした。安倍ブレーンはこう語る。
「総裁選のさなかに候補の1人だった町村信孝・元官房長官が入院し、出身派閥の町村派の票が安倍さんに流れた。あれがなければ逆転は無理だっただろう。まさに天の配剤だった」
今回の五輪招致決定でも、安倍首相は"ピンチ"を救われたといっていい。
つい最近までの政治状況は、参院選に大勝したものの、アベノミクスはすでに息切れし、鳴り物入りで打ち出した第3の矢「成長戦略」は看板倒れ。株価の上昇も止まっていた。政策的には完全に手詰まりに陥り、おまけに消費税引き上げという不人気政策の決断を迫られていた。高支持率を維持する材料は五輪招致に成功するしかないところに追い込まれていたのだ。
「もともと招致活動は石原慎太郎・前東京都知事とライバルの石原伸晃・環境相(自民党東京都連会長)が主導していたから、総理はそれほど熱心ではなかったが、側近で広告業界に太いパイプを持つ世耕弘成官房副長官が早い段階で『東京が勝つ可能性が高い』という見通しを伝えると、総理は五輪に便乗した。中東や東南アジア歴訪の際に積極的に招致に乗りだし、最後のIOC総会には自らブエノスアイレスに飛び、皇族の高円宮紀久子さままで引っ張り出した。それも9分9厘成功するという電通の事前情報があったからだ。総理のプレゼンが決め手になったというのは完全な演出だった」(招致に関わった石原系自民党議員)
それでも安倍首相は賭けに勝ち、手詰まり状況を脱した。いまや国会は自民党の1強状態、党内にも安倍首相の敵は見当たらない。五輪歓迎ムードのドサクサで「今のうちにやってしまえ」と懸案だった消費税増税を決定、官邸のブレーンたちは五輪の経済効果を「アベノミクス第4の矢」と呼びはじめた。悪のりした五輪便乗商法ではないか。
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