経済産業省の試算によると、買い物困難者は全国に600万人といわれる。中山間地域で高齢化や過疎化が進み、買物が困難になっているというのは想像しやすいが、実は都市周辺にも広がっている。かつてニュータウンや新興住宅地として宅地化された都市周辺でも高齢者夫婦や一人暮らし世帯が増加。人口減や郊外型ショッピングモールの出店により、旧住宅街でスーパーや商店が撤退したり、商店街が衰退したりするなど買物が不便になっている地域が増えている。
<買い物支援だけではない>
グリーンコープ生協ふくおかでは、2011年より買い物困難者の調査を開始。組合員から買い物の不便さなどの声を受け、12年3月より「みんなのお店元気カー」による移動販売を開始した。
この取り組みにより、買い物支援はもちろん、地域のコミュニティの場をつくることや高齢者の見守り機能を果たしている。買物を通して人が集まることで、コミュニティが発生する。そこではコミュニケーションが生まれ、高齢者や若い育児ママが孤立しないように交流を図る。また定期的に集まる機会を設けることで、「○○さん、今日は来ていないから、帰りにちょっと訪ねてみるね」のように買物客同士が様子をうかがい、見守り機能を果たす。移動販売とはいっても、地区中を売りながら移動を続けるのではない。販売時間は1カ所につき30分ほど。住民が集まって、あいさつから始まり、世間話ができる十分な時間を確保している。また地域コミュニティは生協の組合員だけで形成されるものではなく、組合員以外も含まれる。福岡県ではこの課題に正面から取り組むために、全国で初めて員外利用を認めている。
<今後の課題は収益性>
12年3月のスタート時では県内30カ所で販売を行なっていたが、現在は対象地域が広がり、60カ所以上に。場所によっては、20名を超える利用者が集まるが、1カ所の利用者は平均4~5名と少なく、採算は取れていない。店舗販売と同じ価格で販売しているほか、移動販売車にかかる経費や人件費で利益を出すまでには至っていない。「それでもやる価値がある。グリーンコープだからできること」と語るのはグリーンコープふくおかの中島常務理事。利益だけに注目してしまうと継続は難しいが、福祉の視点で捉えることで、存在意義は際立つ。
<地区によって、温度差も>
移動販売の開催場所によって、利用者数が大きく異なっている。5人以下のところもあれば、20名を超えるところも。利用者数の鍵を握っているのが、その区の区長や町内会の民生委員だという。地域の世話役が積極的に区民に声掛け、回覧板などに移動販売のお知らせを挟むことで利用客が増えている区域もあるそうだ。公民館の駐車場を開放してくれるところもあり、取り組みの社会的意義などを理解してくれる区域では利用が多いという。高齢者のなかでも「久しぶりやね」、「今なんしようと?」、「次はお隣さんも呼んでこよう」など着実にコミュニティは広がっている。商品を手に取り、選びながら、また試食をしながら会話がどんどん弾む。「久しぶりにだれかと会って、話ができるのはうれしい」と話す利用者もいる。
先に掲げた買い物支援、地域コミュニティ形成、見守り機能がうまく回っている。これに利益性が加われば、一般にももっと普及するはずだ。
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▼関連リンク
・グリーンコープ生協ふくおか 元気カー
■大淘汰時代が始まる 地場スーパーはこれで勝つ!
<日 時>
10月2日(水)午後5時~(開場 午後4時半~)
<プログラム>
第1部 午後5時~午後5時半「次のM&A対象はここだ!」
(株)データ・マックス 流通事業部 部長 鹿島 譲二
第2部 午後5時半~午後6時45分「地場スーパーはこれで勝つ!」
(株)スーパーまるまつ 代表取締役社長 松岡 尚志 氏
<会 場>
IPシティホテル 2階
福岡市博多区中洲5-2-18
(地下鉄 中洲川端駅2番出口より徒歩3分)
<参加費>
3,000円(税込)
※IBクラブ会員は2,000円(税込)
※セミナー終了後、懇親会(希望者のみ お一人様別途3,000円)
<申込方法>
コチラからFAXいただくか、下記のメールフォームから申込ください。
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