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"東南アジアの電力塔"にラオスの水力発電がすごい(前)
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2013年9月17日 07:00

 1970年代のラオスで、20~30年先を見据えて、ダム開発に情熱を注いだ日本人たちがいた。40年前に運転を開始したラオス・ビエンチャン北部のナムグム第1ダムは、現在もラオスの輸出産業である水力発電を支え、ラオス経済に貢献している。著しい経済成長とともに電力不足が懸念されるミャンマー、カンボジアなどの東南アジア。その真ん中にあるラオスでは、豊富な水資源と高低差を利用して水力発電を行なっており、電力は安定している。その開発可能な潜在発電能力は、まだまだ大きく、現在の約10倍の電源開発が可能だと見込まれている。経済発展とともにエネルギー供給力が必須となる東南アジアで、その中心に位置するラオスの水力発電の発展が、電力不足を解決する懐刀となる。海はないが、陸の要衝にあるラオス。周辺各国にエネルギーを供給する"東南アジアのバッテリー"となれるか。

<国を支える水力発電>
damu.jpg 自然エネルギーのなかでも、最も発電効率が高いと言われる水力発電。めぼしい輸出産業を有していなかったラオスが持っていたのは、クリーンエネルギーを産み出す豊かな自然だった。貿易風は南から吹き、タイ北部を抜け、ラオスの山岳にぶつかる。発生した雲が、メコン川下流域に降雨をもたらす。
 国土面積と高低差、熱帯雨林による森林と水量の豊富さが、水力発電に適していた。その始まりは、1950年代。この国の水力の潜在能力をいち早く見抜き、その扉を開いたのは、日本人だった。1958年、ラオスを訪れていた日本工営の久保田豊社長(当時)が、当時の国家計画大臣と会談。その際、電力の安定供給のために水力発電を提案し、計画が始動した。水力発電所第一号は、1972年に建設された。

 電力・公共社会基盤整備などの総合コンサル会社・日本工営の創業者である久保田豊氏は、1890年、熊本県阿蘇の生まれ。中国と北朝鮮の国境を流れる鴨緑江にある水豊ダムの開発など、大規模水力発電の建設に携わった。終戦後、日本工営を設立。国連のメコン川流域開発調査団のメンバーとして、ベトナムなど東南アジアで数々のダム開発事業を行なった。55年前、東南アジアの未来を見つめた久保田社長の先見の明が、長くラオスの経済を潤すことになる。

<高い利益率を誇るラオスの電力会社>
EDL-Gen.jpg 現在、ラオスの水力発電を取り仕切るラオスの電力会社EDL(ラオス電力公社)の経営陣も、1970年代から日本が継続してきた支援への感謝の思いを忘れていない。「ナムグム第1ダムには、ずっと日本の援助が入っていて、日本につくってもらったものをメンテナンスして長く使っています。70年代の開発時に、日本工営の久保田社長らと直接やりとりした技術者たちはすでに退職していますが、我々は、今もこれからも日本から引き継いだ"ジャパニーズスタンダード"を維持していこうと努力しています」と、EDLの発電事業部門を担当するEDL-GenのラッタナCOO(最高執行責任者)は語る。
 水力発電により、EDL-Genは、安定した利益を出し、2013年3月期の4半期の売上高で1,413億4800万キープ(約18億6,000万円)。4半期の純利益は、1,659億2400万キープ(約21億9,000万円)。その高い利益率には目を見張る。水力発電が、燃料費などのコストがかからない点で有利なのに加え、EDL-Genの念入りなメンテナンスによる発電所の稼働率の高さが利益の伸びにつながった。ラオスでは、EDL-Genとともに、独立系の発電事業者(IPP)も発電事業に携わっているが、IPPの立ち上げの際にその株式をEDL-Genが取得。その独立系発電事業者とのジョイントベンチャーの成功などが利益をさらに押し上げた。

<現在の約10倍の電源開発が可能>
 ラオスの水力発電のすごいところは、まだまだ潜在発電能力を秘めているところだ。現在、ラオスの水力発電は輸出産業に発展した(地域によってはタイなどから輸入しているところもある)が、開発済みの水力発電能力は、その全体の潜在発電能力の約8~10%に過ぎない。理論上、今後、引き続き約1万8,000MWの電源開発が可能だと言われている。
 EDL-Genは、現在、881MWの設備容量を持っており、今後、10年で、その設備容量を2412MWにまで増やすことを計画している。それには、技術、資金の両面で先進国の協力が必要となってくる。
 「発電所を増やす計画だが、まだ資金が十分に準備できていない。海外からの投資家の投資を期待している。日本の投資家にも来てもらって、水力発電開発を一緒にやっていきたいと思っています」と、ラッタナCOOは語る。ここに、日本の再度の"出番"がある。

(つづく)
【岩下 昌弘】

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