サントリーホールディングス（株）（SHD）傘下で、清涼飲料水大手のサントリー食品インターナショナル（株）（SBF）は2013年９月９日、英国の製薬大手グラクソ・スミスクライン（GSK）から２つの飲料ブランド事業を買収することで合意したと発表した。買収総額は2,106億円（約13億5,000万ポンド）。SBFの公募価格は3,100円で、17日の終値は3,480円だった。クロージングが12月末とされている同社のM&Aは果たして同社にとって、追い風となるのか向かい風となるのか。NET-IBでは、ヘルスケア事業部独自の視点から、買収劇の検証を試みる。

＜旧英領で事業強化の基盤を図る＞
　SBF社広報部によれば、買収手続きの完了は12月末に予定されている。一部メディアの報道では、今回の買収劇にまつわる様々な憶測がささやかれている。
　取材に対して同社は、「GSKが２事業部門の売却を２月に発表、それを受けた買収だった」とし、TPP等の野望については否定している。同社は、GSKが旧英領のアフリカやマレーシアで展開している販路に着目したとする。「弊社にとって欧州は大事。プラットホームを獲得することで事業強化の基盤を狙っている」（同）とする。

　リーマンショック以降、長い低迷を続けてきた日本経済。シュリンクを免れられない国内市場に対し、製造コストの圧縮が可能な海外市場への進出。よりグローバル化する国際市場のなかにあって、10年12月に上場した大塚HDや11年３月に上場したカルビーの例を見れば明らかなように、成長戦略を維持するために行なう上場は、食品業界にとって今や有力な常套手段と化している。

＜買収額は売上高の２倍以上＞
　SBFは13年７月３日、GSKの買収に先立ち、東証一部に上場したばかりだった。同17日の時価総額は１兆1,417億円。公募価格は3,100円で、海外を含めた投資家に売り出された株式はSBFとSHDを合わせて１億2,520万株。額面に換算すると、調達した資金は約3,900億円（SBF2,900億円、SHD1,000億円）にのぼる。鳥居信宏社長は今後、借入金などを含めて最大6,000億円をM＆Aに投下する方針を打ち出しているとされる。
　SBFの買収先は、GSKが英国で展開する「ルコゼード」（エナジードリンク）と「ライビーナ」（フルーツジュース）の2ブランド。前者は英国のスポーツ飲料市場でシェア１位、ライビーナは果汁飲料市場でシェア４位とされている。
　９月５日、ロイター通信がSBFによるGSK買収の第一報を流したことで、買収劇は世界の知るところとなった。海外市場に詳しい（株）グローバルニュートリショングループ（本社：東京都豊島区、武田猛社長）によれば、両ブランドの12年度の売上高は約５億ポンド（Lucozade：387.3Mポンド、Ribena150Mポンド／2012年12月末〆52週）とされている。買収額のおよそ２分の１以下。果たして、高い買い物だったのか、安い買い物だったのか――。

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＜COMPANY INFORMATION＞
サントリー食品インターナショナル（株）
代　表：鳥居　信宏
所在地：東京都中央区京橋3-1-1
設　立：2009年２月
資本金：1,683億8,400万円
売上高：１兆8,515億6,700万円（12/12連結）9,921億6,000万円（12/12単体）
事業内容：国内・海外の食品事業

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