土地選定・取引のプロセス、移転予定地の周辺環境や安全対策、保育需要に釣り合わない定員拡充など、さまざまな問題点が指摘される(社福)福岡市保育協会 中央保育園の移転事業。さらに、福岡市の調査報道サイト「HUNTER」の取材により、福岡市で計画され、費用が予算案に計上されていた現地建て替え計画が、商業施設に拘る髙島宗一郎福岡市長の"鶴の一声"で破棄された経緯が明るみになった。当初から計画されていた現地建て替えが実施されていれば、問題視する声が多い現・移転予定地の取得費約8億9,900万円は必要のない出費。この問題を根底から覆す事実になる。(「HUNTER」記事の詳細はコチラ)
要するに、中央保育園の移転事業は、『髙島市長のちゃぶ台返し』で始まった、つじつま合わせの事業であり、待機児童解消という大義名分も、耐震性に問題がある上に老朽化していた現在の中央保育園の園児の安全確保も、中央区の潜在的保育ニーズも、とって付けた理由。ゆえに、多くの福岡市民にとって素直に納得ができない内容になってしまった。結果的に、そのしわ寄せは、福岡市、ひいては我が国の未来を担う子どもたちにおよぶ。17日に開かれた福岡市議会の一般質問では、そうした『子どもたちの犠牲』が惹起される内容の答弁が、吉村展子こども未来局長によって行なわれた。
福岡市における待機児童には、特定の保育所を希望し、ほかに入所可能な保育所があるにも関わらず、そこへの入所を断る子どもは含まれていない。考えようによっては、「入所可能な保育所」の範囲を広げることで、定義上、待機児童を減らすことも可能になる。危惧されるのは、大幅に定員を増やす新・中央保育園が、遠方の市民にも「入所可能」と見なされることで、同保育園を希望しなければ、待機児童扱いされないという状況だ。髙島市政は、新たな中央保育園の存在を"悪用"することで、見かけ上、待機児童ゼロの達成に近づけることができる。
既報の通り、現・移転予定地で安全対策が求められている前面道路(今泉公園通り)は、交通量の多い一方通行道路。車による送迎では渋滞による時間のロスを招き、また、公共交通機関を経由した送迎では、幼い子どもを連れて通勤ラッシュの混雑に巻き込まれることが容易に想像できる。はたして、遠方から新・中央保育園への我が子の入所を希望する保護者がどれだけいるのか甚だ疑問とされている。
しかし、吉村局長は、答弁のなかで「入所可能な保育所とは、たとえば自宅から20~30分未満で登園できることなど、立地条件が登園に無理がない保育所とされていることから、自宅や"勤務先から"極端に離れた保育所を紹介し、待機児童から除外することはない」と説明。勤務先を含めたことで、たとえ住まいが遠方であっても、多くの企業が集積する中央区天神に保護者が勤めていれば、新たな中央保育園は入所可能と判断されるという意味にとれる内容である。(関連リンク動画27分50秒以降を参照)
問題の答弁は、民主市政クラブ・調崇史市議(城南区)による福岡市の待機児童に関する質問に対して行なわれた。吉村局長は調市議の質問を受けて、まず、2013年4月1日現在の待機児童を、福岡市全体で695人、各区別で東区143人、博多区98人、中央区115人、南区152人、城南区28人、早良区75人、西区84人と回答。年齢別では、0歳児62人、1歳児292人、2歳児179人、3歳児118人、4歳児28人、5歳児16人と答えた。次に、保育所整備の状況について、同年9月1日現在で、東区2カ所50人、博多区5カ所140人、中央区6カ所280人、南区4カ所240人、城南区5カ所240人、早良区4カ所240人、西区9カ所500人の計1,690人分が決定していることを説明。その後の答弁で、髙島市政が掲げる待機児童受け入れ目標1,900人分の残210人分を東区で協議中とした。
住宅・マンションの新築が進み、居住者が増えている東区・西区、とくに保育所整備が追いついていない東区の状況を考慮すると、髙島市政による『見かけ上の待機児童ゼロ対策』が実行される可能性は高いように思える。そうなれば、現地建て替えという当初の計画を180度転換させた髙島市長の鶴の一声が、子どもたちに犠牲をもたらすことになるのだ。中央保育園移転事業は、福岡市の未来にとって軽視できない全市的な問題となる危険性を孕んでいる。
▼関連リンク
・福岡市議会放映 【YouTube議会録画配信】(9月17日本会議その1)
・中央保育園移転問題(福岡市中央区今泉)HP
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