秋の行楽シーズンを前に、「道の駅」について、設置目的に沿って運営されているかどうか考えてみた。全国に設置されている「道の駅」は、1,004カ所(2013年3月末時点)。秋の観光地として名高い長門峡(山口市阿東生雲東分)の「道の駅」を訪ねた。
<利用者にとって不便な「道の駅」の実態>
下記の写真は7月28日未明から山口県と島根県を襲った豪雨によって通行止めとなっている長門峡の様子である。その入り口に、道の駅「長門峡」がある。
2010年(平成22年)1月16日に山口市と阿東町が合併し、道の駅「長門峡」は山口市が運営管理することになった。
国交省のホームページによると、「道の駅」を設置した背景として、「長距離ドライブが増え、女性や高齢者のドライバーが増加するなかで、道路交通の円滑な『「ながれ」を支えるため、一般道路にも安心して自由に立ち寄れ、利用できる快適な休憩のための『たまり』空間が求められています」としている。また「駐車場、トイレ、電話は24時間利用可能で、休憩目的の利用者が無料で利用できる充分な容量の駐車場と清潔なトイレ、道路や地域の情報を提供する施設、様々なサービス施設」だとも記している。
しかし、実際現場を訪ねてみると、目的が果たされているとは言い難い。
<道の駅「長門峡」の現状>
駐車場の横にトイレがあるが、その入り口には下記の張り紙がある。
手書きで書かれたポスターには大きく「ゴミはゴミ箱へ」へと書かており、周囲にはペットボトルやビン・缶や灰皿の設置はしていない。それらを捨てようと思うと、図のように20m以上離れた売店近くまで足を運ばないといけない。
「道の駅」の配慮事項に、「年少者、高齢者、障害者等、様々な人の使いやすさに配慮」となっているが、あたかもそれを無視するような場所に設置されている。
<施設管理者の山口市の対応>
道の駅「長門峡」のある阿東町は、7月28日にゲリラ豪雨により大きな被害を受け、山口市は道の駅「長門峡」から50m離れた国道9号線沿いの場所に災害復旧のためにボランティアセンターを設置。
長門峡を訪れる観光客に対しては、ゴミ捨て場を不便な場所に設置し、ボランティアの人達には多くのゴミ捨て場を用意する山口市のアンバランスな対応が目につく。
<今後の対応についての提言>
確かに観光客の一部には家庭用のゴミを捨てるような不心得な人も多いかもしれない。しかし今「道の駅」に求められているのは快適なドライブをするための空間の提供である。
今こそ「道の駅」は官による管理から脱却し、民間活力を利用した「おもてなし」の心で地域再生に取り組むことが大切である。
もしもそれが出来ない「道の駅」はいずれ消滅することになり、即ち地域の交流の場が失われることになり、全国の津々浦々に出店し、ゴミ捨て場やトイレを提供しているコンビニにその座を奪われることを覚悟しなければならない。
【「道の駅」について】
日本全国に設置されている「道の駅」(2013年3月末現在)の数は、地域別では以下のとおり。
北海道(114)、東北(112)、関東(148)、北陸(72)、中部(118)、近畿(118)、中国(93)、四国(79)、九州・沖縄(120)。
九州・沖縄の各県別にみると、福岡(16)、佐賀(8)、長崎(9)、熊本(23)、大分(22)、宮崎(16)、鹿児島(19)、沖縄(7)。
中国地区では鳥取(12)、島根(28)、岡山(15)、広島(17)、山口(20)。
「道の駅」は当初市町村単位で設置されたため、合併によって一つの行政区で複数の「道の駅」が存在することになった。複数の「道の駅」がある市町村は、九州・沖縄、山口地区では以下のようになっている。
・福岡県:なし
・佐賀県:唐津市(2)
・長崎県:平戸市(2)、松浦市(2)
・熊本県:上益城郡山都町(2)
・大分県:中津市(2)、日田市(2)、豊後大野市(2)
・宮崎県:宮崎市(3)、日向市(2)、日南市(2)
・鹿児島県:鹿児島市(2)、曽根市(2)、指宿市(2)
・山口県:萩市(7)、山口市(5)、下関市(3)
▼関連リンク
・「道の駅」とは?(国土交通省ホームページより)
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