ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

クローズアップ

"東南アジアの電力塔"にラオスの水力発電がすごい(中)
クローズアップ
2013年9月18日 07:00

<第一号ダム建設に関わった日本人たち>
水力発電のエンジン。 ラオスと日本の国旗が書いてある ラオス水力発電の始まりは、1958年にさかのぼる。日本工営の久保田豊社長が、調査でラオスを訪れた当時、ラオスの首都ビエンチャンでは頻繁に停電が起こっていた。久保田氏は、当時の国家計画大臣だったスパヌボン殿下(後の大統領)と会談した際に、「電力が不足しているので、何か良いアイディアはないだろうか」と聞かれた。朝鮮半島などで水力発電事業開発の経験を持っていた久保田氏は、「山もあり、水も豊富なラオスは、水力発電に適している。ビエンチャン郊外の川にダムをつくれば、安くて安定した電力を供給できると思います」と、ダム開発を提案。この時の久保田氏の提案は、ラオスの20~30年先を見据えていた。この会談の後、日本工営の技術者をラオスに派遣、自らも現地で調査に当たり、ナムグムダム開発への構想を練り上げた。
 当時、久保田社長の年齢は69歳。過酷な状況のなかに飛び込み、「ラオスに水力発電所をつくる」という気概とともに、セスナ機を飛ばして調査。未踏のジャングル地帯での地形測量や観測は想像を絶する苦難を強いられた。メコン川流域踏査の後、現在のナムグムダムのある約370km2(福岡市ほどの広さ)におよぶ広大な場所を、水力発電を行なう場所として"最適"だと見定めた。
 しかし、実際にダムを建設するための資金が足りなかった。久保田氏は、金策にも奔走する。64年、ナムグムダム開発に関する膨大なレポートを書き上げ、ラオス政府の了承のもと、資金調達へ駆け回る。世界銀行のあるワシントンに自費で飛び、融資を申し込み、交渉に2週間かけて粘ったが、世界銀行からは「ビエンチャンの電力需要はせいぜい10MWであるのに、26MWの発電規模の開発を計画している」などの理由で断られてしまう。
 しかし、簡単にはあきらめない。タイ政府と交渉し、余剰電力をタイに売電する約束を取り付ける。この約束を得て、世界銀行に再度、交渉したが、再び断られた。だが、久保田氏らのダム開発にかける気骨は折れない。関係者らは、精力的に交渉に当たり、アメリカから「ほかの友好国から半分の資金提供を取り付けること」を条件に全体の2分の1の資金提供を取り付け、日本、オーストラリア、カナダなど各国からの資金協力が成立した。

<広大なダム建設に情熱>
ダム工事期間中に命を落とした 日本人の墓が建っている 日本工営、日立など日本企業が主導権を握り、1968年、工事が開始された。設計を日本工営、建設工事を間組、三井物産が担当し、発電機に日立、送電網にトーメンなど多くの日本企業が関わった。今、ナムグムを訪れた技術者たちは、ダムを見ると「水力発電を行なうために、非の打ちどころのない場所にある」と、口をそろえるという。
 工事期間中には幾多の困難にぶち当たった。ダム建設中にラオスはパテト・ラオ軍と王国政府軍の間で内戦に突入。ダム周辺が双方の守備範囲の境界線に位置したが、国にとって価値のあるものだと判断した当時のプーマ首相が、ダム周辺を中立地帯に指定した。
 3年3カ月の月日を費やして、71年12月にダムは完成。その期間中、命を落とした日本人の技術者もいる。ダムの近くのお寺には、その魂を弔うお墓がひっそりと建っている。ナムグムダムで働くラオス人たちは、みな、建設時に命を落とした日本人がいることを知っている。72年に稼働し始め、その後、水力発電はラオスの総輸出額の20~30%を占めるほどに重要な外貨獲得手段として機能した。

<輸出産業に成長>
 今でこそラオスでは、銅、金などの鉱物資源が出るようになったが、70年代当時のラオスには、輸出するものが何もなかった。製品をつくる技術もなければ、目新しい農産物もなかった。
 ナムグム第1ダムで蓄積したノウハウを活かして、ナムグム第2などのダムを開発し、水力発電による電力事業は、隣国のタイに売電するなどラオスの輸出産業となっていった。
 ナムグム第1ダムでは、1972年に稼働し始めたエンジンが今も動いている。毎日、欠かさずエンジンをチェックし、メンテナンスを行なっている。そこには、日本から引き継いだ技術を後々まできちんと伝えようとするラオス人の真摯さが垣間見える。日本の技術とラオス人の真面目なメンタリティがうまくかみ合って、40年の時を経ても、エンジンは回り、発電を続け、水力でつくられるクリーンエネルギーは、ラオス人の生活を支えている。

(つづく)
【岩下 昌弘】

≪ (前) | (後) ≫


※記事へのご意見はこちら

クローズアップ一覧
クローズアップ
2013年9月13日 18:47
クローズアップ
2013年9月13日 16:38
クローズアップ
2013年9月13日 13:14
クローズアップ
2013年9月11日 07:00
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
流通メルマガ
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル