19日、福岡県議会９月定例会の代表質問で、小川洋知事は、国際リニアコライダー（ILC）誘致に引き続き取り組む意思を示した。自民党県議団および民主・県政県議団の代表の質問に答えたもの。30kmもの直線の衝突加速器を設置し、最先端の素粒子実験を行なうILCの候補地として、国内では、岩手・宮城両県にまたがる北上山地と福岡・佐賀両県にまたがる背振山地が立候補していたが、科学者、技術者で構成される「立地評価会議」（共同議長：川越清以九州大学教授、山本均東北大学教授）は８月23日、候補地として「北上山地が最適」と判断していた。

　小川知事は、立地評価会議の判断について「大変遺憾で驚いている」とし、背振山地について「自然条件だけでなく、安全安心快適に研究・日常生活ができる都市基盤も評価すべき」、「北上山地については活断層調査がまだ行なわれていない」、「納得いく説明がされていない」などとしつつも、「立地評価会議の評価結果を改めて検証、検討したい」と答弁。
　これに対し、自民党県議団の野原隆士議員は、「知事の決意が感じられない」と再質問。知事は、厳しい指摘にたじろぎながらも、「九州における実現に向けてこれからも頑張っていきたい」との考えを示した。

　一方、民主・県政県議団の堤かなめ議員は、８月に松尾統章議長を団長とする議員団とともにスイスの欧州原子核研究機構（CERN）の実情調査を行なったことに言及し、「ILC建築にあたっては、専門的技術を要することから、地域経済への波及に関しては疑問」との考えを示した。また、調査を通じて気づいた多くの課題が、８月12日に日本学術会議の検討委員会が「時期尚早」と見解を示した際に指摘されていた課題にかなり共通していると述べた。
　小川知事は、ILC誘致に懐疑的な堤議員の質問に対しても「必要なデータ協力を行ないながら、これからも一体となって（誘致活動に）しっかり取り組んでいきたい」と、意欲を示す答弁をした。
　
　下村博文文部科学大臣は、８月21日の記者会見で、候補地に関する「専門家の意見を参考にすべき」としつつ、９月末に日本学術会議が報告書を提出するとして、「これらをトータル的に考え、今後の議論の方向性も踏まえながら、文部科学省として検討する」と述べている。ILC誘致の次の節目は、９月末の日本学術会議の報告書提出と予想されている。この報告書の内容が注目される。

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