<目指すは東南アジアのバッテリー>
隣国のミャンマーに進出した企業は、停電に悩むのが常。自家発電機を設置しなければ、安定的な電力を確保することができない。その点、ラオスには、水力発電があり、ビエンチャンでは、ほとんど停電することがない。
しかも、まだ未開発の箇所が多く、大いなる可能性を秘めている。ただ、現在のラオスの力だけではダム開発のスピード、技術力、資金面で足りない部分がある。日本企業も独立系発電事業(IPP)にからむ動きが出ており、ラオス中部では、関西電力が14年の稼働を目指して開発を進めている。
EDL-GenのラッタナCOOは「ラオスの電力会社が、日本に協力してほしいと思っている部分は2つあります。1つは人材。2つ目は資本ですね。ダムを増やし、電源開発をしていく目標を掲げていますが、それを達成するためには、資本が必要です。技術面の人材も育成していかなければなりません。日本の持っている技術力を活かし、人材育成の面でも助力してもらえれば助かります」と、継続的な先進国による技術、人材育成でのサポートの必要性を訴えた。
<日本が協力できること>
1970年代に日本の協力でつくられた発電モーター、管理システムは現在もナムグム第1ダムで稼働している。ラオスが経済発展期に入った今、継続的に日本が支援できることは少なくない。
1つは、残りの埋もれている約90%の水力発電能力を開発する資本だ。日本の一般的な投資家がこのラオスの電力に直接投資するには、方法はいくつかある。たとえば、EDL-Genはラオス株式市場に上場しており、証券会社に口座をつくれば株式を買うことができる。ただ、上場しているのは、全株式の25%となっている。
もう1つは、赤坂綜合事務所が、EDL-Genと日本の金融機関、投資家とをつなぐ橋わたし役を務めている。日本の投資家がEDL-Genに投資する際の窓口となっており、シサバスCEOから「日本での資金調達を赤坂綜合事務所に任せる」という委任をもらっている。
ラオスは日本など先進国からの資金を集め、未開発となっている水力発電所の開発に着手し、発電規模の拡充を目指す。理論上可能な水力の電源開発(理論包蔵水力)は、ラオス国内に約2万6,000MWあると言われ、このうち約1万8,000MWが開発可能と見込まれている。開発・拡充が成れば、地理的に東南アジアの中心にあるラオスが、東南アジア各地に電力を供給する電力塔となる可能性は十分だ。
<40年の時を経て>
日本は、1950年代からラオスのインフラ整備に協力して道路をつくったり、2000年代に入っても粛々と山奥に送電網をつくったりしてきた。2010年代、ビジネスに携わる日本企業の多くは、人口の多いミャンマー、カンボジアなどに目を向けている。
ただ、恩恵を受けたラオス人たちは、日本がインフラ整備やダム開発を手伝ってくれたということを忘れてはいない。ナムグム第1ダムにある発電モーターには、日本とラオスの国旗が掲げてあり、「日本の国民と、政府が、支援した」と、ラオ語で書いてある。ラオスの技術者らは、毎日それを目にしながら働いている。
40年の時を経て、今もなお、日本の技術、日本人の持っていた精神は、ラオスで息づいている。日本工営の久保田社長らと実際にダム建設に携わったラオスの技術者の第1世代は引退したが、その次の世代の技術者らが育っている。
その間にも日立、三菱重工などがメンテナンス、人材育成などで協力してきた。このところ、東南アジアの経済発展とともに周辺各国での電力需要は急増しており、日本の誇る技術力、人材育成のノウハウ、資金力がラオスでは、さらに求められている。1970年代にラオスで活躍した日本人たち。40年の時を経て、再度、新時代の日本のサムライたちの"出番"が現地にはある。日本企業にとっても、そこに、ビジネスチャンスがある。
運命の綾とでも言うべきか、40年前に日本が持っていたダム建設の技術、水力発電開発と事業運営のノウハウを今は、ラオスが引き継いでいるという状況。ラオスの水力発電事業から、逆に日本が学べることも少なくない。
今後、世界で必要性を増してくるエネルギー。そのなかでも、大きな可能性を秘めるラオスのクリーンエネルギー。東南アジアに目を向けるすべての日本企業が、ラオスを刮目して見るべきときが、到来した。
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