秋から冬にかけて身体を暖めたい時期の韓国料理の定番と言えば「サムゲタン(参鶏湯)」だろう。鶏肉に高麗人参、もち米などを入れて煮込んだスープで、朝鮮半島ご当地のみならず、日本の多くの韓国料理店でも食べることができる。
丸鶏を水炊きして食べる方法「ペクスク」と、もち米で作る粥が一つになって食する「タックク」がサムゲタンの原型とされている。丸鶏を水炊きして食べるものには、高麗人参やナツメ、栗、松の実、ニンニク等が加えられ、2~3時間以上煮込まれるが、量が多く2~3人分はあるため、日本の料理店などでは骨付き鶏モモを煮込んだ小さめの「半鶏湯(ハンゲタン)」を1人分として提供している店もある。
日本では香りが敬遠されるため「高麗人参」を入れない店も多い。しかし、本場、韓国や北朝鮮は高麗人参がふんだんに盛り込まれ、薬膳料理や滋養食として扱われている。韓国本場と「風味」で若干違う日本のものは「雑炊」に近い。鶏は簡単にほぐれ食べ進めていくにつれ、鍋は鶏、野菜、米でグジャグジャになる。スープと雑炊の「中間点」のイメージだ。
韓国では、夏バテの疲労回復食として広く認知されていて、夏限定でしかサムゲタンを出さない店もあるほど。ただ、身体を暖めたい冬の時期にも多く食され、季節を問わない「万能食」と言える。調理時には味つけはほとんど行わないが、噛むと鶏の風味豊かな「原味」をしっかりと感じられる。柔らかい鶏肉を口に含むと溢れるエキスで幸福感も得られる。
塩、胡椒、キムチなどで味を整えて食べることもできる。米は鶏から出たダシを存分に吸い込み、味わい深い。「良薬口に苦し」と言うが、そもそも「美味しくて健康にも良い」とあれば誰も文句は言わない。
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