福島第一原発事故の避難生活が2年半を迎え長期化し、孤立や経済的負担の増大など深刻な問題が生まれるなか、九州・沖縄への避難者が支え合うネットワークづくりが始まった。九州・沖縄に避難している人たちが支援情報の共有や心の支え合いをめざすネットワーク設立準備会を兼ねた学習会が9月22日、福岡市で開かれ、九州各県の避難者ら約40人が参加した。
避難者のネットワークや団体が各地に生まれているが、九州・沖縄全域を対象にして大規模に結成をめざす動きは初めて。宮崎に避難している古田ひろみさん(45)ら11人が発起人となって、全国への避難者へ適切な支援が一日も早く実施されるように願って開いたものだ。参加者からは「避難者同士が話せる場ができる」と期待の声が上がった。
<ゆるくつながって、情報共有し支え合う場に>
「九州・沖縄避難者ネットワーク設立準備会」発起人の一人で、群馬県から福岡県に避難している芝野章子さん(46)が「避難者がつながることで力をつけようとか何かしようというのではなく、県を越えてゆるくつながって、避難者に必要な情報を共有して拡散していきたい」と挨拶。「避難者が手を取り合ってネットワークをつくっていって、地元で避難者を支援してきた人たちにはサポートをお願いしたい」と呼びかけた。
設立準備では、避難者は様々な環境に置かれているので、多様な考え方を尊重しながら、「避難の問題は同じだよね」と、ゆるやかにつながることを考えている。
<支援法の理念が避難者まとまる原動力に>
福島市から鹿児島県へ、子ども3人と避難している西真紀子さんは「子ども被災者支援法ができた時は、いい法律ができたと思った。東電と話をしても話にならない。汚染水は最初から流している」と発言。「被災者は、本当は家族いっしょに避難した方がいいと思う」と話し、それができない現状や、避難生活で子どものストレスの大きさ、福島に一時的に帰る旅費の重い負担を訴えた。
設立準備会によると、原発事故子ども・被災者支援法(子ども被災者支援法)の理念が、バラバラだった避難者を一つにまとめる原動力になっているという。昨年12月、子ども被災者支援法の基本方針に被災者が必要とする内容を反映させようと開いた福岡フォーラムでは、九州・沖縄の避難者ら120人が参加し、同じ立場の避難者同士が悩みや苦しみを共有した。
子ども被災者支援法は、放射性物質による健康上の不安、とくに子どもに配慮する要請に鑑み、被災者への生活支援施策の推進を定めた法律。避難、居住、帰還それぞれの権利を認めたうえで、そのいずれを選択しても支援することを基本理念にしている。2012年6月に成立したが、政府は、法に義務付けられた基本方針を策定しないまま、1年以上放置していた。8月30日、基本方針案を発表し、9月23日までパブリックコメントを募集した。
<被災者の環境は多様、必要な支援も違う>
9月22日の学習会では、基本方針案へのパブリックコメントについて学習した。
村上岳志・福島大学講師(地方行政論)が解説し、「この法律は、思いは熱いが、穴がいっぱいある」として、実施にあたって官僚が裁量で解釈できる幅があるとした。基本方針案についても「今までやってきたことがほとんどで、目新しいことはあまりない」と指摘。支援対象地域(福島県内の33市町村)の設定の問題、帰還支援策、帰還促進策が目立ち、避難者定住策が弱いなど、問題点を挙げるとともに、「今困っていることは何か、どうしてほしいか、声を上げることが重要」と強調。「自分の思いをパブリックコメントに出してほしい」とよびかけた。
村上氏は、被災者の環境は多様だとして、帰還する予定の人、避難したまま帰還するつもりがなく、夫は今後も残ったままの人、夫を呼び寄せる予定の人など、それぞれ必要な支援内容が違うと述べ、施策を要望していくうえでのポイントをアドバイスした。
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※避難者から「九州・沖縄避難者ネットワーク設立準備会」への問い合わせは、発起人の古田ひろみさん(メールアドレスは、9_o-hinan@umitama.info)まで。避難者以外からの問い合わせには対応していない。
【編注】避難者のプライバシー保護のため、ご本人の希望などにより、氏名をひらがな表記したり、年齢を記載していない場合があります。
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