<組織改革が急務>
東京電力は、なお上場会社である。利益を追求しなければならない。東電の現在の業務は、(1)電力の安定供給、(2)福島第一原発事故の賠償、(3)福島第一原発事故の事後処理の主に3つからなっており、上場会社として利益を上げる必要性から、(1)を重要視し、利益を伸ばすためのマイナス要因となる(2)、(3)にかかるコスト、人的な資本をできる限り、削減しなければならないというゆがんだ構造となっている。汚染水問題の解決は、今、日本という国家が抱えている問題の最優先事項の一つでありながら、最優先されないという歪曲した構造となっている。
日本という国家としては最優先で福島原発事故の解決、復興に向かうため、東電としても(2)、(3)を最重要事項に掲げなければならないのに、そうなってはいない。事後対応として国が後ろに下がり、東電という組織を事故収束の前面に出したがために、国家よりも小さな組織の利益追求のために問題解決が先送りされ、国家は国際社会からの信頼を失うという危機に陥っている。
この間違った構造が、この2年半、根本から解決されようとせずに放置されてきた。この日本の組織の持つ大と小のかけ違いが、今回の汚染水問題の解決を遅れさせ、悪化させた。
一度、この流れを断ち切るには、国が前面に出るだけでなく、東電を破たん処理し、解体するしかないのではないか。業界は違うが、一度、破たんの憂き目を見た航空会社のJALは、有能なリーダーをトップに据えたことによって、立ち直った。有能なリーダーと、しかるべき経営再建策を取れば、組織は生き返るといういい例だ。
<経産省が予算権限握る>
東電、経産省や各局、個人の立場...など国家よりも小さい組織、メンツを守ろうとするがあまり、事故収束が遅れ、このままでは国家の信頼性を失ってしまうことになりかねない。「現政権では、安倍首相のもと、経産省の権力が強い。福島では、いまだに事故体制が続いていて、首相直轄で解決に向かわなければならない深刻な状況なのだが、原子力規制委員会と規制庁が事後処理の権限を持つことが本筋にもかかわらず、なぜか経産省が、予算の権限を握っている。縦割り構造や官僚の無責任主義、単年度予算などさまざまなものがないまぜとなって、事態は進んでいない」と飯田氏は、組織の構造的な問題点が、収束を遅れさせたと指摘する。
国家的な緊急事態にも、霞ヶ関は平時の感覚のまま、予算と権限を発揮する官僚主義がはびこっていたことが最短距離で行くべき解決に際し、そうはならずに、被害は増大した。
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