九州・沖縄への避難者には、いくつか特徴がある。
<支援法の話なら、まとまれる>
「九州・沖縄避難者ネットワーク設立準備会」の調べでは、九州沖縄への避難者は、小さな子どもがいるなど、放射能による健康への不安を感じて避難した人が大半だとみられている。放射能の影響が少ない地域を避難先に選んだため、福島からできるだけ遠方の九州・沖縄に避難したといえる。福島県からだけではなく、関東圏からの避難者が多いのも特徴だ。
逆に言えば、関東圏は、避難して来る人もいると同時に、避難して行く人がいることになる。
同じことは福島県内でもあてはまる。原発事故子ども・被災者支援法(子ども被災者支援法)の基本方針案は、福島県内の33市町村を「相当な放射線量が広がっていた」として支援対象地域にした。33市町村の中にも、福島市や郡山市、いわき市などは、避難して行った人もいる一方、原発避難者の生活拠点として整備する動きが進んでいる。放射能への価値観の違いから、安心だと考える人もいれば、健康への不安を感じる人もいる。
9月22日の学習会では、「支援法の話だと、避難者がだれでも入れる」と言う声が出された。子ども被災者支援法が、避難する人、居住し続ける人、避難して帰還する人それぞれの選択を認めていることで、分断されずに、まとまれるというのだ。
<避難長期化、先行き不安を抱える>
母子で避難して、夫を残している人が多いのも特徴だ。避難者と支援者の交流などを目的に活動している市民グループの「ふわりネットワーク・福岡」の避難者・移住者のアンケート調査では、約6割が母子避難だった。また、住民票を移転していなかったり、「自主避難だから」とか「(自分だけ避難して)ふるさとの人に申し訳ない」などの理由から被災して九州に避難したことを行政に届け出ていないケースも目立つという。福島県以外の関東圏で放射能への不安を感じて避難した気持ちが理解されず、孤立することもある。
その結果、行政などから避難者支援の情報が受け取れる環境になかったり、避難生活の長期化にともない、避難先で先行きが見えない不安を抱え、精神的負担や経済的負担が増大し、家族崩壊や自己破産などにつながる恐れが出ている。
はしもときわさんは、子どもと2人で、福島県郡山市から福岡県に避難している。原発事故直後、余震が続く中、20数年暮らした郡山市を離れ、車で約1,300キロ避難した。「(支援法基本方針案で)郡山市は支援対象地域に入ってうれしいが、33市町村だけ支援対象なので、『あの人は支援されているから(避難できた)』とみられると思って避難したくてもできない人が出ると思う」と、再び分断される不安を語った。
<避難者の心の傷を癒す一歩へ>
はしもとさんは、原発事故や放射能汚染の状況について何が正しく何が事実なのか、何を信じていけばいいのかわからない中、メルトダウンや格納容器など原発について勉強した。「すぐ近くに原発があったのに、知らなかったのが悔しい。今は自分で調べて自分の信じた道を選び、国の対応を常に見張っていなければいけないと思っている」と話した。
放射能の影響をどう受け止めるかの価値観の差があり、避難していない友人の中にも、不安でどうしようもない人も、安心だと考える人も、無関心の人もいるという。「原発、放射能をタブー視するのではなく、明日の天気と同じように、重い話だが気軽に話せるようにしたい」
「九州・沖縄避難者ネットワーク設立準備会」発起人の古田ひろみさん(45)は、「避難者は、何もかも信じられなくなっている。つながる場が必要。一番困っていることを言えずにいる人もいる。ネットワークができれば、それを代弁できる。信頼を回復していく一歩。避難者の心を支え合い、つながる場をめざしたい」と語った。
≪ (前) |
※避難者から「九州・沖縄避難者ネットワーク設立準備会」への問い合わせは、発起人の古田ひろみさん(メールアドレスは、9_o-hinan@umitama.info )まで。避難者以外からの問い合わせには対応していない。
【編注】避難者のプライバシー保護のため、ご本人の希望などにより、氏名をひらがな表記したり、年齢を記載していない場合があります。
※記事へのご意見はこちら