この他にも、さまざまな「事件」について言及している能宗メモだが、永田町ではその波及について囁かれている。
「徳洲会から亀井氏が得た金額は、数十億円にものぼる。この金が亀井氏を通じて石原慎太郎氏にも流れているようだ」
亀井静香氏、石原慎太郎氏、徳田虎雄氏の関係は緊密だ。2001年には東京都知事だった石原氏を擁立して、石原新党を立ち上げる動きがあった。狙いは同年に行われた参院選だ。現職が改選の石井一二参院議員しかいない自由連合にとって起死回生を図る好機であり、同年の自民党総裁選で小泉純一郎氏を支援したものの、政策で裏切られた亀井氏にとって政界で浮上するチャンスでもあった。
しかし、もっと大きな動きになると期待した石原氏がしり込みしたため、新党構想はとん挫してしまう。
だが亀井氏の石原新党への夢は消えていなかった。昨年12月の衆院選前、同構想は再燃の兆しを見せた。しかしスポンサーであるはずの虎雄氏はすでに政界を引退し、その身体はALSの難病にむしばまれていた。石原氏は80歳を迎え、歩くのもおぼつかない様子だった。実際に翌年の参院選では、街宣車の上にも上がれなかったのである。
さらに石原氏は、三男の宏高氏の問題がある。昨年12月の総選挙で返り咲いた宏高氏の落選中に、妻が代表を務める会社に有力遊技器具メーカーから月額100万円のコンサル料が支払われていた。昨年の衆院選で宏高氏は遊技器具メーカーから「選挙応援」を受けていたとされる公職選挙法違反疑惑がある。
いまのところ徳田毅氏について、自民党は表だって処分は行なう予定はない。だが党内では「議員辞職すべし」「少なくとも離党すべきだ」という意見が出ている。
同じことは石原宏高氏にもいえる。遊技器具メーカーからの「支援疑惑」が報じられた今年3月、自民党内では宏高氏に「議員辞職か、少なくとも離党」を求める声がほとんどだった。6月の東京都議選、7月の参院選を前に、悪い影響は排除したいというのが本音だったが、その声もすぐおさまった。
ただ毅氏が、宏高氏と異なるのは、すでに東京地検特捜部が動いている点だ。宏高氏についてはまだ特捜が動く様子はない。この件を追う記者は話す。
「特捜はアメリカのFBIの動きを待っている。宏高氏に便宜を図った遊技器具メーカーは、海外で裁判を抱えている。特捜はその裁判が確定したところでロッキード事件の例にならい、アメリカから資料をもらおうとしているのではないか」
近年は検察自身も不祥事が多発した。名誉挽回を狙う可能性は十分にある。さまざまな思惑を抱えながら、事件は進展していくだろう。そのゆく果てはどこなのか。
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