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安倍総理の強運、どこまで続くものか(後)
未来トレンド分析シリーズ
2013年9月27日 07:00

 強運の総理とはいえ、根拠なき楽観論では大きなしっぺ返しが避けられない。現在、470億円の予算を投じ、汚染水漏れ対策を行なう方針が発表されたばかりであるが、その効果の程は未だ実証されていない。言うまでもなく、オリンピックの東京開催自体は喜ばしい限りであるが、被災地に対する予算配分等が削減されるのではないか、ということが懸念される。

 日本原子力研究開発機構のシミュレーションによれば、福島の原発事故から発生した高濃度の放射能物質が2014年にはハワイ沖に到達するという。「完全にブロックされている」という安倍総理の発言が事実と違うということが満天下に明らかになった場合、その責任をどうとるのか。強運の安倍総理だが、油断大敵である。

 本来、福島県沖で高い放射能の汚染値が観測されていないのは、観測体制が整備されていないが故のことである。海底の汚泥や海水にどの程度の放射能被害の影響が及んでいるのか、具体的な調査研究は行なわれていない。こうした状況を放置したままで、東京オリンピック招致に浮かれているようでは、安倍総理の強運も早晩、風前の灯に陥る可能性は否定できない。

kokkai2.jpg 視点を変えれば、アベノミクスに関しても、東京一極集中の弊害が懸念されており、地方経済への波及効果が少ないのが気になる。東北の被災地のみならず、全国の地方経済活性化への対策が十分に行なわれているとは思えない。難題は他にも多い。

 たとえば、対中関係。尖閣諸島をめぐる波風は国有化宣言以来、1年が経ったが依然として沈静化するどころか、日中間にわだかまる過去最悪の不信感の源となっている。安倍総理は「日中間の対話の窓は常に開いている」と明言しているものの、自ら中国との関係打開に向けて動こうとする兆しは見えない。日本にとって、最大の貿易相手国である中国との関係改善へのビジョンが示されない事態は、極めて異常と言えよう。

 また、TPP参加の是非についても、アメリカからの強い要請を受け、安倍総理は参加の方向に舵を切ったが、その交渉の中身については国会に対しても、国民に対しても、守秘義務を理由に明らかにしようとしていない。そうした秘密主義の交渉は日本の国益にとって果たしてどこまで正当性を持つものであろうか。TPPが日本経済の再生にとってプラスというのであれば、その交渉の中身を堂々と国民の前に明らかにするべきではなかろうか。

 その他、原発再稼働の是非をめぐる問題しかり。ロシアとの北方領土をめぐる平和条約の締結への動きや北朝鮮との間での横たわる拉致問題しかりである。"強運"安倍総理の前途は決して生易しいものではない。「強い日本」、そして「強い日本人」を取り戻すことを最大の使命とするのであれば、安倍総理には、こうした難題に対して、不退転の決意で臨むとともに、自らの思いを率直に国民に対して訴える機会を増やして頂きたいと願うところである。

(了)
【浜田 和幸】

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<プロフィール>
浜田和幸氏浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。


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