<国際的に大きな批判>
海外メディアの紙面での論調と、日本の大手メディアの論調にかなりの食い違いが見られるのも今回の汚染水問題の特徴の1つ。海外メディアは、日本のお粗末な対応に対して痛烈だが、日本のメディアは、一部を除き、沈黙している。
飯田氏は、「原子力、放射能のリスクに対して、海外は厳しい目で見ている。メディアも含めて、リスク感覚が高い。日本側は、これまで政府の姿勢が甘かった。自民党だけではなく、民主党時代から、原発推進、放射能のリスクに対して慎重な人材を組織のなかに入れてこなかった。低線量の被ばくを軽視する人で組織を固めてきた。そこに原因がある」と、海外から日本を見る目と、日本内部での論調の違いを分析する。この感覚のギャップは、日本の国際的信用を落としかねない。
<収束を急ぐ国際的な義務>
「このままの状況が続くか、もしくは悪化するとなれば、トリチウム(相対的に放射線影響が小さく拡散しやすい)だけでなく、ストロンチウムなどさまざまな核分裂生成核種が海に流出することになる。こうした放射性核種は、捕食者に蓄積するので、マグロやメカジキ、イルカ、クジラなどに蓄積されていく。さまざまな経路でヒトの被ばくにつながり、集団全体での発ガンなどの放射性リスクが高まる」と、飯田氏。このまま、手を打たないと、ガンやさまざまな放射線影響の発生率が高まる危険性をはらんでいる。汚染水問題に関わる早急な組織構造改革と、問題解決をするためのタスクチーム結成の必要性を訴える。
日本は、国際的に収束をスピードアップさせる義務を負う。中国との間で問題になっている大気汚染、PM2・5の問題において日本は中国に技術協力をしているように、日本も、もっとトップレベルの技術を持つ国に国際的な協力を呼び掛けてもいい。それにより収束が早くなるのであれば積極的にそうするべきだろう。
「コントロール下に置いている」と安倍首相は、国際的な場で述べたが、現状は、コントロールできておらず、コントロールできていないことを正直に国際的な場で述べたほうが解決を早めることになった。コントロール下に置くには、まず東電を破たん処理した上で、現在の組織構造を壊し、抜本的な組織改革を断行するしかないのではないか。
どのように収束を図っていくのか、透明性を高めることも大事。国民や海外各国からも見えやすいところで議論し、幅広く解決策を模索していくことが急務だろう。
東京五輪招致成功の祝賀ムードは良いが、それが汚染水や福島原発事故から国民の目を背けることになってはならない。2020年の東京開催に向け、汚染水問題を最優先事項としてクリアし、さらに、復興も進めなければならない。ここを乗り越えなければ、「おもてなし」どころではなくなってしまう。
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