台湾観光局のCMを日本の民放テレビ局でよく見かける。
観光PRコマーシャルの主役は羅志祥。日台を結ぶ架け橋として、ルックスも活動内容の面からも「適役」が登場している。多くの台湾フリークにとっては嬉しい限りで、空前の『台湾ブーム』を象徴する事象だ。以前は中国に気を使って、「台湾」そのものが日本の茶の間で放映されることは少なかった。
しかし、CMの内容に関しては関係者の間で賛否両論があるようだ。賛成は言わずもがな「台湾が美しく奇麗に描かれている」、「羅志祥がカッコいい」といったものだが、批判的なものとしては、「何が言いたいのか漠然としていてよくわからない」、「あの映像で台湾の魅力が伝わったのか」、「ただイメージ映像を流しているだけで残念」という意見だ。
抜擢された「主役」は申し分ない。東京でライブ活動を行なうなど、既に日本に進出を果たしている羅志祥。羅志祥は、ファンのみならず関係者やスタッフを大事にする「謙虚さ」を持っている。礼儀を重んじる日本をターゲットにした台湾観光PRには打ってつけの存在と言えよう。
では視聴した人たちは何に違和感を覚えたのか。羅志祥に問題があるのではない。ひょっとしたら、制作サイドが「台湾の魅力をどう伝えたらよいのか」を絞りきれていなかった可能性がある。定まらないうちに、夜景や101を美しい映像でリズム感ある編集で・・・と、結果的に「工夫のない映像」が出来上がってしまったのかもしれない。
放送されているCMの演出が「台湾」にマッチしていない気がする。台湾の魅力とは、じっくり滞在することで味わえるテンションの高さ、人の情熱、出会い、空気感、喧噪、夜市の活気である。台湾に濃密な「ストーリー」を感じた方も多いはずだ。それにも関わらず、今回のCMでは、台湾が醸し出す独特な風味の「ストーリー」が描かれていない。台湾着陸前の機内放送で流れる映像とさして変わらない内容では、せっかく良い時間帯に確保できたCM枠も『無駄遣い』というものだ。多くの台湾フリークが感じた「物足りなさ」。これは、商業ベースで利用している人間ではなく、実際に往来することで台湾の虜になった人たちには、じゅうぶん理解できる感覚だと言えそうだ。
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