アンコールワットのようなきらびやかな表舞台と対象に、内戦などの戦禍の爪痕が残るカンボジア。復興を妨げる地雷や不発弾などの処理に奔走している現実がある。今回、アキラ地雷博物館に行き、そこで我々は地雷の怖さ、戦争の悲惨さを知った。特に地雷・不発弾などは現在も土の中に埋もれており、日常生活になかでいつ爆発するかわからない。まさに恐怖と隣り合わせなのだ。
現地で精力的に地雷撤去活動を行なうアキラ氏に賛同し、同博物館で日本人ボランティアガイドとして活躍する川広肇氏からメッセージが届いた。
アキラ氏は、本名をアキ・ラーと言う現在40歳の純粋なカンボジア人です。5歳の時に両親をポルポト派に殺され、10歳の時にはそのポルポト派によって少年兵に仕立て上げられ、戦場に駆り出されます。その後、13歳の時にはベトナム軍に、16歳の時にはカンボジア政府軍に入れられ、20歳までの10年間をずっと少年兵として戦場で過ごしました。1991年パリで和平協定が結ばれてやっとこの国の大きな内戦が終結し、翌年国連のカンボジア暫定統治機構(UNTAC)が組織され、この国に平和維持活動(PKO活動)に入ってきます。93年アキラ氏が20歳の時、このUNTACの求めに応じてその手伝いをします。それが地雷撤去活動だったのです。
その時、アキラ氏は『これまで自分は数多くの地雷を埋めて罪無き大勢の人々を傷付けて来た、これからはその償いとしてこの地雷撤去活動を一生賭けて続けて行こう』と決心したそうです。以来、地雷を撤去し続けて現在に至っています。20歳から35歳までの15年間で、撤去した地雷、不発弾の数は約50,000個にものぼります。多くはその場で爆破処理しましたが、1割の約5,000個を火薬や信管を抜いて安全処理し、自宅に持ち帰りました。そして99年26歳の時、その地雷や不発弾を展示する初代「アキラ地雷博物館」をシェムリアップ近郊にオープンし、訪れる内外の客に戦争の悲惨さや地雷の怖さを訴えて行ったのです。
また同時に、地雷被害の子供や戦争孤児を引き取ってこの博物館で育てる活動を始めました。その後博物館の場所は移転し、また地雷撤去活動もかつては単独での活動でしたが、2008年6月からは「CAMBODIAN SELF HELP DEMINING(CSHD)」と言うNGOを作り、隊員26名を率いて活動を続けています。孤児院施設も「リリーフセンター」と名を改め、現在では40人の子供を引き取って育てています。
アキラ氏の活動資金は、博物館の入場料、募金箱のお金、小さい店の売上金、そしてアメリカ人のビルさん、ジルさんが作った「THE LANGMINE RELIEF FUND」のお金だけです。
私はそのアキラ氏の活動に大変共鳴し、ボランティアガイドを始めましたが、昨年「アキラ地雷博物館・日本人応援団」を作り、今、日本人に対し支援を呼び掛けています。年間12,000円の協力金で応援団員になって頂き、その継続的な支援金でアキラ氏の活動をより大きく支えて行きたいと考えています。カンボジアでの地雷撤去を少しでも早く実現し安全な国を作る為、また一人でも多くの恵まれない子供をリリーフセンターに受け入れる為には、まだまだ多くの継続的な資金を必要としています。それを我々日本人で担いたいと考えています。
これまでも多くの日本人の先輩達が、アキラ氏に対する支援を行って来ていました。しかしそれは個別バラバラであり、単発的であった為余り表に出ていませんでした。日本人の奥ゆかしさは勿論美徳ですが、国際社会に有っては時にマイナスとなります。折角のそうした支援をより大きく且つ継続的なものにする事で表に出し、日本人の軍事に拠らない民間レベルでの国際貢献度を、世界に知らしめようではありませんか。
戦後66年が経過し平和な国である筈の日本も、油断するといつ平和が脅かされる事態が忍び寄ってくるか知れません。平和を維持する為には絶えず心配りが必要です。そうした事を考えるきっかけとしても、このアキラ氏への支援に力を貸して頂きたいのです。そうする事で我々日本人もアキラ氏、ひいてはカンボジアと言う国に対する民間レベルに於ける支援をしっかり行っているのだと言う事を、世界に向けてアピールしようではありませんか。
皆様方の御協力を、心よりお待ちしています。
川広氏は、「日本人は、カンボジアに来て現場の悲惨さを見て『すぐ支援しましょう』と言いますが、その場限りが多いのは確かです。本当は少しでもいいので長期的な支援が欲しいのです」とコメント。熱しやすく冷めやすい日本人の気質に苦労している様子。震災を経験した日本人がゆえに、今後の支援の在り方を考えなおす時期に来ているのではないだろうか。なお、川広氏は継続的な支援を呼びかけるために、下記のサイトを立ち上げた。ぜひ、のぞいてみて欲しい。
今回の視察で、カンボジアの光と影をつぶさに観察できたことは非常に大きい。光はこれからのカンボジアの発展と子供たちの笑顔。影は地雷・不発弾に苦しむ人々。今後はカンボジアが自立して立ち直っていくための、真の支援を行なうべきだろう。
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