<ほかの銀行にも飛び火する信販会社との「提携ローン」>
みずほ銀行は、系列信販会社のオリエントコーポレーション(オリコ)などを通じて、暴力団員などの反社会的勢力におよそ2億円を融資していることを知りながら、2年以上にわたり抜本的な対応を取っていなかったとして、金融庁から経営責任の所在の明確化や再発防止策の取りまとめを求める業務改善命令を受けていたことがわかった。
昨年12月に金融庁が実施したみずほ銀行への検査で、みずほ銀行がオリコなどの信販会社から持ち込まれた「提携ローン」を再審査することなく、自動車の購入代金などとして合わせて約230件、総額およそ2億円を暴力団などの反社会的勢力に融資していたことが発覚した。
みずほ銀行によると、今回のような「提携ローン」の場合、融資に先立つ事前の審査は信販会社が行なっており、その審査で問題がないと判断された場合、融資はほぼ自動的に実行していたと説明。
その後、融資の後に行なっているチェックで、本来であれば融資を行なえない反社会的勢力との取引が見つかれば、取引解消をしなくてはならないにもかかわらず、その顧客に対して新たな融資を行なわないようにする対応にとどめていた。
問題融資は、暴力団組員らが自動車ディーラーなどで中古車を買った際のローン中心だったと言われているが、その一部は返済されず、事実上不良債権化していることもわかった。
また、問題融資を受け付けた場所は全国各地に分散しており、暴力団組員らが融資の申し込みを特定の場所に集中させるのを避け、問題の発覚を遅らせていたと言われている。
みずほ銀行の担当役員はこの融資についての情報を把握しながら、2年以上にわたって抜本的な対応を取らず、金融庁の検査で発覚するまで取引解消の処置をしていなかった。
みずほ銀行への改善命令を発表した金融庁幹部によると、「件数も多かったが、2年以上も何もしなかった責任は重い」と糾弾。
このため金融庁は、銀行の内部管理体制に重大な問題があるとして、今月27日、「みずほ銀行」に対して業務改善命令を出し、10月28日までに経営責任の所在の明確化や信販会社と情報を共有した防止策の提出を求めている。
今のところ、みずほ銀行に対して業務改善命令が出ているが、ほかの金融機関もオリコなどの信販会社が持ち込む自動車ローンなどの「提携ローン」を取り扱っており、みずほ銀行と同様に、再審査することなく融資を実行しているのが実態だ。
ある金融通は、「銀行は警察と連携して暴力団などの反社会的勢力の情報を入手し、個別の融資については厳重な審査をしているが、信販会社が持ちこんだ『提携ローン』は100%信販会社が保証しており、焦げ付く心配がない優良案件だ。そのため、安易に取り組んだことが今回の大きな要因ではないか。今回の業務改善命令は、みずほ銀行だけの問題ではない。信用組合や労金を含む国内すべての金融機関にも、『暴力団などの反社会的な勢力の提携ローンの再審査と回収をしないと、第2のみずほ銀行になるぞ』との警鐘を鳴らす意味で、業務改善命令を公表したのでは」と語る。
今回の問題融資に対するみずほ銀行とオリコなどの信販会社の責任は重いが、暴力団関係者と知りながら提携ローンを持ちこんだ中古車販売業者のモラルも問われることになりそうだ。
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