<「設計し直す」とされた初代カワイイ区>
カナダ人女性のミカエラ・ブレスウェートさんを2代目区長に迎え、9月12日に再スタートを切った福岡市のPR事業「カワイイ区」。同日、リニューアルされた公式HPの公開、新区長名での特別住民票の発行開始、半年以上休止していたメルマガの配信などが行なわれた。
「カワイイは男女差別を助長する」との批判を受け、初代区長であった人気アイドルグループ「AKB48」の篠田麻里子さんが市の意向で2月に突然退任。その後も髙島宗一郎福岡市長自らが区長代理となって事業を存続させていた。そして今回、再スタートにともない、同事業発足時とほぼ同じ費用約1,000万円がかかっていることがわかった。区長不在時の運営費も合わせると、同事業に2,000万円以上が投じられることになる。
福岡市が情報開示した文書によると、今回の再スタートした同事業は、6月に行なわれた提案競技で選定された広告代理店(株)ビービーディオー・ジェイ・ウェスト(本社:福岡市中央区、加藤和豊社長)が、2013年7月16日から14年3月31日まで、随意契約で業務委託されており、その委託料は999万750円。内訳には、WEB・SNSプロモーション費377万円、WEBサイト・SNS企画管理費325万5,000円などが含まれている。新しくなったカワイイ区の公式HPは、以前のものから大幅に変更されており、区長のほかに福岡の情報を発信する数名の「広報室」を設置するなど、体制にも変化が見られた。
今回、選定された業者がテーマに掲げたのは「カワイイ区のReDesign(設計し直す)」。その提案書では、「初代カワイイ区」における課題(問題点)が指摘されていた。内容は以下の通り。
(1)"かわいい"は抽象的。カワイイものかどうかの判別は個人の感覚による。発信する福岡の魅力の仕分けが困難。
(2)話題づくりに注力し過ぎ、区長選定先行型となり区長が機能する仕組みを設計することが困難。
(3)区長以外の顔が見えず、行政区として実態(感)が薄い。
広告代理店からの手厳しい意見は、同事業スタート時の内容のお粗末さを物語っている。そして、その認識に立って作られた「2代目カワイイ区」は、「カワイイ」という文言以外、もはや以前とは別のPR事業。髙島市長肝煎りのPR事業は事実上、破綻したと言える。
<区の命運を握るブレスウェート区長>
髙島市長のトップダウンで始まった「初代カワイイ区」の発足にかかった費用は987万円。業務委託先は(株)電通(本社:東京都港区、石井直社長)。篠田さん起用の理由は、「平成24年3月の市長表敬時に、福岡のファッション産業振興とシティプロモーションに対する協力の申し出あり」のほか篠田さんの知名度など。さらに、企画提案書のようなものは紙1枚のみで、その際の「新規委託契約チェックリスト」には、委託先の選定について、「篠田麻里子事務所(サムディ)からの指定」で「適合」とされていた。念を押して言うが、同事業にかかった費用の出処は、髙島市長のポケットマネーではなく、市民の血税である。
「2代目カワイイ区」の先行きも不安定だ。業務委託先との契約は、今年度末(14年3月31日)までであり、「その後については未定」(市担当者)という。ブレスウェート区長は、約7カ月の任期中に結果を残さなければならない。とはいえ、市担当者によると、「区長自身、すごく前向き。これまで行なっていた福岡の魅力を伝える動画の取材を継続して行なっており、市民の方からその様子をまちで見かけたとのご意見をいただいた」とのこと。契約上、市側は広告代理店経由でしかブレスウェート区長を動かせないことになっているが、区長自ら積極的に動いており、市担当者は期待感から笑みをこぼす。「発信力」だけでなく市民との距離感でも、すでに上司(市長)を上回っているかもしれない。
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・【動画ニュース】福岡市カワイイ区長にミカエラさん
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