<橋渡しの世代>
筆者が長年、業界の取材をしてきたことからも指摘できる。緒方氏の前世代は、「大手に負けてたまるか」と福岡の業界を牽引してきた実績を残した。闘争精神が旺盛で、それぞれに個性豊かな兵(つわもの)ぞろいであった。ただ現実は、プラスばかりでなくマイナスの一面も有していた。同業者なのだから助け合っていけばよいのだが、お互い剥き出しのライバル意識を燃やす。切磋琢磨であればよいのだが、相手を落とし込む策謀を練ることもしばしばであった。
ソロンの田原学社長に接する際に、たびたび気になることが耳に残ったことがあった。「あの経営者は油断ならない。表向きはニコニコしているが、裏に廻ると俺のことをあることないこと言いふらしている。一度は仕事の妨害をされたこともあるひどい奴だ」。ライバル意識を燃やすのは結構なことであるが、世間の常識から外れた非常識が罷り通る業界であった。お互いに足を引っ張り合いながら闘ってきた。
業界での緒方社長の年齢は、業界の創業者たる大先輩たちと、現在の若手経営者世代の狭間にある。『橋渡しの宿命』を背負っていたのだ。緒方氏は1987年までサラリーマンを経験しているから、世間常識を体現してきた。使われる経験の少なかった先輩創業者たちの常識のなさには、啞然としたこともあっただろう。本人も、「業界を世間一般に通用する体質に改善する必要がある」と使命感を抱き、九住協の理事長を務めてきた。
たしかに、現在の業界若手経営者たちは、世間一般の常識を持ち合わせて手堅い経営に専念している。しかし、ひ弱さは免れない。たとえば、浄水通り周辺の高級住宅街に全国大手のデベの開発が犇めいている。この現実を目の当たりにしても、彼らは「まー地元の我々は資本力も限度があるから、都心部の大型開発は無理だ。仕方がない。自分の力に応じた事業を展開するだけだ」と割り切る。潔いと言えば、それまでであるが――。
昔の先輩たちは納得しなかった。承知しなかったのだ。大手に堂々と挑んでいった。「絶対、大手のシェアは40%を超えさせることを許すな!!我々地元の仲間で、供給の70%は握ろう」と行動スローガンを打ち立てる。そうなると、結束して大手に立ち向かう陣型を築くのだ。皮肉と言えば皮肉だが、こういう局面では一致団結をするパワーを発揮してきた。現在のマンション供給実績において、大手陣営が凌駕している。
<惜しいかな!!10年若かったならば>
緒方氏は地元の業者の劣勢を眺めながら、歯がゆい思いをしているであろう。業界の創業者兵ぞろいの先輩たちと現在の若手経営者たちの狭間に立って、緒方氏は「大手と拮抗しようと挑戦意欲に燃えている経営者の見本が、西武ハウスの豊福社長と見なしているが、次が見当たらない。期待するのは、えんの原田社長、ランディックの中山社長あたりだろう」という評価を下している。
もう一度、最前線に復帰を願いたいが、緒方氏本人の心中の本音はいかがなものか、うかがい知れない。「『俺が10年若ければ、企業再生の最前線に立つつもりだが』というのが緒方社長の本音」ではないかというのが筆者の本音である。
<COMPANY INFORMATION>
(株)ユニカ
代 表:緒方 寶作
所在地:福岡市中央区大名1-2-23
設 立:2003年2月
資本金:8,000万円
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