NET-IBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、放射能事故を引き起こした東電に警察・検察当局は、ただの一度も強制捜査を行なっていない、30名以上の警察天下りを受け入れてきた東電の刑事責任に目をつぶることが他の企業にも天下りを拡大させると指摘する、9月28日付の記事を紹介する。
既得権が支配する日本。既得権の中核は米国。米国は日本を戦利品と考えている。日本は米国の支配下に置かれている。
日本人の行動は2つの類型に分かれる。自分の損得を優先する人は対米従属になる。米国が支配者であり、米国に忠誠を誓うことで、米国による恩恵を受けようと考える。現実主義者=損得優先主義者はこの道を選ぶ。自分の損得よりも、正義・公正・尊厳を優先する人は、自分の不利益を承知の上で、対米自立を指向する。数の上ではこちらが圧倒的に少数派である。
既得権の中枢に位置するのが米国に加えて官僚機構と大資本だ。官僚機構は米軍に忠誠を誓うことで、戦前の利権を維持してきた。官僚利権の守り神は米国である。この官僚機構の中心を担うのが、財務省と法務=検察である。両者が霞が関のなかでも圧倒的な影響力を保持している。この財務省と法務省が、対米自立ではなく、対米隷属であることが日本を歪めている。そして、金銭至上主義の財界。大資本は資本の利益を優先するために、「強者」である米国と官僚機構に隷属する。
かくして、米官業のトライアングルが日本の既得権益を構成する。そして、このトライアングルの手先となって活動するのが、政と電である。利権政治屋と電波産業が、既得権による日本支配のために尖兵となって行動する。米・官・業・政・電 これが日本の既得権益であり、日本を暗黒の世界にしている中心である。
3.11の原発事故が発生し、日本が脱原発に進むべきことは論を待たない。原発事故損害賠償金額は天文学的規模に膨張し、東電は実質破たん状態にある。東電を法的に整理し、東電の経営者、株主、債権者が応分の責任を取ることは当然のことである。人類史上最悪の放射能事故を引き起こした東電と国は、当然のことながら、刑事責任を問われる存在である。その東電に、警察・検察当局は、ただの一度も強制捜査を行っていない。警察と検察が腐敗しているから、市民が東電を刑事告発した。ところが、腐敗している検察当局は、東電を不起訴とした。工場が事故を引き起こして有害物質を海洋や河川に廃棄して被害が広がれば、警察・検察は、事故を引き起こした事業者の刑事責任を追及するだろう。ところが、東電には、ただの一度も強制捜査を行っていないのである。その直接的な理由が東電の天下り受け入れである。東電は30名以上の警察天下りを受け入れてきた。天下り受け入れ最大手企業である東電の刑事責任に目をつぶることが、他の企業にも天下りを拡大させる、恰好のアピール材料になるのだ。
日本は、残念ながら、単なる後進国である。新潟県の泉田知事が、東電による苅羽・柏崎原発の再稼働申請を承認した。京都大学原子炉研究所の小出裕章氏は、泉田知事のこれまでの発言が、正しいことを言っていると評価しながら、最後まで正論を貫くかどうかには、懐疑的な見解を表明されていた。その泉田知事が東電の原発再稼働申請を承認したのである。泉田知事に対して、目的のためには手段を選ばぬ攻撃が繰り返されてきたに違いない。
これから3年間、安倍政権は国政選挙を行わない構えである。日本を好き勝手に破壊し尽くすことになるだろう。日本はいま、最悪のリスクに直面している。これがアベノリスクだ。
『アベノリスク-日本をメルトダウンさせる7つの大罪-』(講談社)
対米従属派の人々、原発再稼働に賛成の人々、TPP参加に賛成の人々。彼らに共通する属性は、「損得優先」である。欲得主義である。彼らが作る社会が「強欲資本主義社会」である。東大の鈴木宣弘教授が言うところの、「今だけ、金だけ、自分だけ」の人々だ。
事態を打開する唯一の方法は、国民が目を醒ますことだ。
※続きは、メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』(有料)」第677号「東電法的整理否定の論拠を何ひとつ示せぬ日経新聞」にて。
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