汚染水対策として、原子炉建屋周辺の地盤を凍らせる凍土壁で遮水壁を作る計画が立てられている。しかし、プラント技術者の視点から、この凍土壁での遮水壁構築に疑問を呈する意見が上がっている。凍土により大規模な壁を作ることは、まだ技術的に確立されておらず、作業を行なう重機も少ない。技術者により結成された「プラント技術者の会」の筒井哲郎氏は、技術的に確立されている粘土壁(ベントナイトスラリーウォール)で構築すべきとの提言を行なった。
<凍土壁構築に310億円の国費>
現在、政府・東電側の計画案では、原子炉建屋周囲に一周約1.4kmの凍土壁を設置して、遮水を行なうという計画が立てられている。
この凍土壁に関して、技術者の間で、技術的な課題が多すぎるのではないかとの疑問の声が上がっている。凍土壁は、地中に凍結管を一定間隔で注入して、冷却材を循環させ、地盤を人工的に凍らせるとうもの。適切な深度まで凍土層を作って、建屋内に地下水が流入するのを防ごうというやり方。福島第一原発にも携わった鹿島建設が、凍土壁での遮水壁構築を提案している。この凍土壁構築と、汚染水放射性物質除去設備の費用に国庫から約470億円(凍土壁に約320億円、放射性物質除去設備に約150億円)の予備費が投入されることになる。
<前例のないやり方>
ただ、周辺1.4kmに及ぶ大規模な凍土壁の構築は世界でも前例がなく、技術的な実証がなされていない。
凍土方式による遮水壁の構築に、千代田化工建設などでプラント技術者としてのキャリアを持つ筒井哲郎氏が、24日の日本外国特派員協会、25日の国会エネルギー調査会で、凍土壁での構築の再検討を求め、粘土壁での遮水壁を設置することなどを提言している。
汚染水問題は、早急に解決すべき課題。筒井氏は、凍土壁での構築は、工期が長引く可能性があることを懸念している。今、こうしている間にも汚染水は1日400t出ている。「地盤の条件を調べて、早急にやるべき。政府の案は、ボチボチやっていきましょうかというのんびりした計画。技術的に確立された方式で、急いでやるべき問題だと思う。プラント技術者の視点から言うと、粘土壁の方が、確実で速く、コストも安くつく」と、指摘した。
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