汚染水問題で、海への流出を防ぐために今になって凍土壁による遮水壁を築こうと検討されているが、2年3カ月前、事故後、3カ月経った11年6月の段階で、当時、事故対応にあたっていた馬淵澄夫首相補佐官らの間で、遮水壁を築こうという案が出されていた。設計着手の一歩前までいっていながら、その案は、東京電力が負担する経費により株式市場に混乱を招く恐れがあるとして、消えてしまった。
当時の民主党政権下で、原発事故対応の首相補佐官として事故対応にあたった馬淵澄夫衆院議員が、語った。
<2年前に粘土壁の設計案>
福島原発事故後、2年半が経過した現在、汚染水漏れを食い止めるために、凍土による遮水壁の構築が検討されているが、さかのぼること2年3カ月、11年の6月の時点で、遮水壁の建設が検討され、実行されようとしていた。四方を囲む遮水壁を建設、設計するという記者発表まで行なわれようとされていたが、その案は、立ち消え、遮水壁は建設されることなく、今に至っている。
当時、原発事故対応担当の首相補佐官として、任務にあたっていた民主党の馬淵澄夫衆院議員が、25日の国会エネルギー調査会(準備会)で、その経緯を語った。
事故後、3カ月経過した11年6月、馬淵議員は、福島第一原発視察へと赴く。当時の吉田昌郎福島第一原発所長とともに現場に入り、汚染水と地下水が混ざらないようにするための遮水壁を作る必要性を確認し、実際に、境界の画定をし、材料を決め、建設設計を開始する準備段階にまで入っていた。
<東電、債務超過を懸念>
馬淵議員らは、四方を囲む遮水壁の設計を行なうという記者発表を、11年の6月14日に行なおうと準備していた。地下水の流入を防ぐためのベントナイトスラリーウォール(ベントナイトを材料としたスラリー工法による粘土壁)を築くための経費は、東電側の試算で1000億円程度かかると見られていた。これを記者発表し、東京電力がこの経費を負担することが明らかになると、債務超過と見られ、東電の株価が暴落することになる。
6月28日に東京電力は株主総会を控えていた。「"資本市場への混乱を招く"という理由で、記者発表は見送られることになった。28日に東電は株主総会を控えており、当時の経営幹部から、有価証券報告書の監査期間中でもあり、記者発表を控えてほしいとの依頼が政府に入った」と、馬淵議員は振り返る。
当時の民主党、海江田万里経産相との話し合いのうえで、「記者発表をすれば東電の経営に大打撃を与える」として、地下水の流入をふせぐための遮水壁を築く設置計画の記者発表は見送られることになった。
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