<旧弊打破の試みは続くか>
一連の流れをみると、責任の所在は前町長にあることは明らかで、その行為は町有財産を蔑にした背任すら構成する可能性が高い。しかし議会の議事録には、現町長の責任を追及しても、前町長の責任を追及したくだりは見つからなかった。確かに、行政の連続性に照らせば、前町長の責任の一端を現町長が負担することは当然ではある。ただ、真に真相究明と被害の回復を目指すのであれば、百条委員会を通じて前町長や元担当課長から話を聞き、責任の所在を明らかにするのが本筋であろう。議会の主流派が前町長の選挙を応援した経緯に鑑みれば、その責任追及に及び腰になる気持ちもわからないではないが、こうした事態の真相究明を困難にしかねないという意味で、やはり議会と行政の慣れ合いは改められる必要性が大きいといえよう。
3年半に及んだ「水巻町隣接地霊園問題」での議会主流派と町長との対立関係にみられるように、少なくとも直近4年間の水巻町政は、両者の緊張関係の下で進められた。緊張関係の下では、行政は自らの身仕舞を厳格に正される。その現れともいうべきか、近藤町長の誕生後、水巻町では幾つかの不正が表沙汰になった。冒頭に挙げた町長給与5%カットの原因となった職員の横領問題は、前町長時代に発覚し、当事者と幹部職員との間で内々に棚上げされていたものが町長交代によって明るみに出たもの。霊園問題にしても同様の構図がみられる。実現させた幾つかの公約にとどまらず、これらの不祥事が明らかになったこと自体、旧弊に囚われない「モノ言う町長」の功績と言ってもよいだろう。
では、きたる選挙戦に向けて、近藤町長は有権者に何を訴えるのか。9月6日の記者会見において同氏は、2期目に当選した場合の抱負として、(1)自然再生エネルギーを手がける企業の誘致、(2)町ぐるみで交流を続けるオランダを模したJR駅舎や通りの整備、(3)北九州市との合併実現に向けた住民投票の実施などを挙げた。
既に水面下で繰り広げられるつばぜり合いでは、対立候補者自宅の小火(ボヤ)話などが、まことしやかに語られる水巻町長選挙。当の近藤町長は「馬鹿らしい」と意に介さないものの、地方ならではの泥臭い選挙戦術も飛び交っているようだ。先の選挙結果と4年間の実績を町民がどう評価するのか。水巻町長選挙は、10月15日告示、20日に投開票を迎える。
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