県政史上2番目の若さで第63代福岡県議会議長の要職についた自民党県議団・松尾統章(まつお とうしょう)県議会議員。将来を嘱望されるホープとして、激変時代のなかの福岡県をどのように見ているのか。今回は、議長と県議と、2つの立場から『志』と『福岡への提言』についてインタビューした。
<ILCへの期待>
――国際リニアコライダー(ILC)についておうかがいします。先日、本会議で小川知事から、誘致への意欲を示す発言がありました。松尾議長としてはどのようにお考えですか。
松尾議長 私もあきらめるつもりはありません。というのも、候補地には8,000~9,000億円が投資されると言われています。投資額の大半を出すのが国で、それ以外については世界中から資金を集めるかたちになる、ということを考えれば、科学者・技術者の判断が岩手だとしても、予算をつける国においてまだまだひっくり返すくらいの活動をやっていきたいと思いますし、そうした意味でも国会議員の先生方に期待したいと思います。予算を出すのは国ですから、政治的・戦略的部分において、十分可能性はあると言っていいと思います。
――県全体の意識についてどう感じていますか。
松尾議長 iPS細胞とかであれば医療に活用できるというイメージが湧きますが、リニアコライダーができたから何なのか、実用化されるのも何十年後でしょう。そうすると、皆さんイメージが湧きませんよね。そういった意味では、皆さんの関心が薄いようにも感じます。
――宇宙誕生の謎が福岡で解明されたことは歴史に残るでしょうし、それだけでも得難いブランディングにつながると思います。
松尾議長 私もそう思います。加えて、経済波及効果です。視察したスイスのセルンの状況を踏まえると、年間2,500人以上の科学者や技術者が常駐することになり、みな移り住んできますので、3人家族として1万人近い人が周辺に住み、その生活の基礎となる学校、病院などができれば、1つのまちが生まれます。期待はふくらみますよね。
――議長になって、物の見方や考え方が変わったところはありますか。
松尾議長 実のところ、「九州の自立を考える会」(注)が発足する前から、地方分権は自分のなかでも考えていました。私が、いろいろとお話させていただいております末吉興一元北九州市長が、北九州港について「選択と集中という形でもう少し戦略的にやっていたら、あの港は、中国や韓国に負けなかった」と仰いました。我が国では空港や港湾の整備には何十年もかかりますが、韓国の仁川空港は約11年で、上海の洋山港も連絡橋で結ばれた沖合30キロ以上の人工島に約3年で開港しています。九州が一体となり、国が地方にある程度任せてくれてスピード感のある港湾計画をとっていれば、絶対に負けてなかったと思います。当然、北九州のことは考えていましたが、福岡県全体そして九州全体のことも考えるようになったのはその頃からです。
(注)真の地方分権型社会の実現を目的として、会派・政治的理念を超えて九州の成長と自立に向けた政策・戦略を研究するため、福岡県議会議員が中心となり、県内の首長、九州各県議会の議員有志、九州の主要企業、団体などを会員として2011年9月に設立された。代表者は藏内勇夫自民党県議団会長。
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