<退任後、建設検討されず・・・>
記者発表は取りやめになったとはいえ、汚染水が地下水と混じり海に流出することを防ぐために、遮水壁はつくらなくてはならない。建設計画を推し進める必要があった。
調査結果から、半年程度経てば、地下水と汚染水が混じり合い、海に流れ出る可能性があることが判明していた。この時点でも、遮水壁の建設は急がなければならない問題だった。
馬淵議員は、当時の菅直人首相、海江田万里経産省と話し合い、引き続き遮水壁の設計、建設を実行することを依頼。菅首相、海江田経産省ともに、遮水壁建設の必要性に同意したという。だが、東電の株主総会を前日に控えた27日、馬淵議員は、原発事故担当の首相補佐官の任を退任させられることになる。
「記者発表は取りやめることになったが、壁の構築については、つくるべきだと判断していたので、当時の(福島原発事故対策統合連絡本部の)菅直人本部長(首相)、海江田万里副本部長(経産相)に依頼をした。が、株主総会を控えた27日に首相補佐官を退任し、私は、この問題からシャットアウトされた状況になった」。
馬淵議員が首相補佐官の任を離れてからは、遮水壁を作る工事計画が進められることはなく、そのまま着工されることもなかった。
<非常時対応の体制に欠陥>
東電の株価が暴落することによる株式市場への影響に重きを置き、国家として、取るべき対策を取らなかったということになる。つまりは、「東電の株価=株式市場の混乱>国家としての危機管理」ということである。進み始めていた設置計画がとん挫したということは、どこかから何らかの圧力がかかったということが推測される。
どの政党、どの人が悪いというわけではなく、国家運営の根幹に関わる組織が、国民の目からは閉じられており、透明性が低く、問題を解決するために最短距離で行くべきはずの組織が、非常時においてそうではなかったことは、1人の日本人として残念なことである。非常事態に際して、スピーディに対応する組織と、危機管理体制に問題を抱えている。
組織構造上の欠陥、政財官の癒着が、復興や汚染水問題の解決を遅らせていることは明白であり、ここを根本的に変えていかなければ、仮に解決したとしても、同じことを繰り返すことになるのではないか。
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