解決まで最短距離で向かわなければならない福島第一原発事故の汚染水漏れ問題だが、対策に関わる組織が乱立。リーダーも多く、効率的なリーダーシップが取れていない状況だ。責任の所在も明らかではない。組織構造上の問題が、解決への道を遠くしている。
<多くの組織が乱立割拠>
汚染水問題が、事ここに至るまで被害が増大した理由の1つに、組織の縦割り、対策チームがバラバラに立ちあがり、効果的に機能していないという構造上の問題点がある。
汚染水対策に関する組織は、原子力災害対策本部(内閣府・安倍晋三本部長)の直轄である「廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議」が汚染水問題に関する対応の方向性を検討。その下に、9月10日に立ち上がった茂木敏充経産相をチーム長とした「廃炉・汚染水対策チーム」があり、さらにその下に、現場部門の廃炉・汚染水対策現地事務所があり、そのなかに「汚染水対策現地調整会議」がある。それとは別に、原子力災害対策本部の下に、「廃炉対策推進会議」があり、そのなかに「汚染水対策委員会」(委員長・大西有三関西大学特任教授)がある。また、それとは別に、山名元京都大学教授を理事長とした国際廃炉研究開発機構のなかに「汚染水関連技術評価チーム(仮称)」があり、汚染水対策に関する組織が乱立している。
<対策チーム1つに集約すべき>
これら、バラバラに乱立した組織により、国内外の叡智を集約し、潜在リスクを洗い出し、対策の検討を行なうとしているが、これでは、「情報の共有」→「リスク評価・選択」→「意思決定」までの時間がかかりすぎることに加え、国内外の叡智は1つの組織に集約していない。
まさに、「船頭多くして船、山に上り」効果的な対策が取れずに苦境に陥ってしまっている。この危機的な状況のなか、これらの組織が乱立していたのでは、現場の対応は遅れるばかり。25日の衆議院会館で開かれた国会エネルギー調査会(準備会)で、阿部知子衆院議員は、「このようにあちこちに対策チームをつくっては、ずるずる行くだけではないか」と組織構造に、疑問を投げかけた。
あちこちに対策チームをつくり、縦割りになり、それぞれの持論、利益を主張し、決断・実行が遅れ、責任を誰も取らないというのは、日本の組織構造の致命的な弱点である。早急に、首相直轄のもと、特別対策のタスクチームを一本化し、実務リーダーを据えたうえで、問題解決まで最短で向かえる特命組織をつくるべきではないか。
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