安倍政権の掲げる成長戦略の一環として、日本版少額投資非課税制度(日本版ISA=NISA)の口座開設の受付が10月1日、スタートした。
バブル崩壊後の1997年、山一証券の経営破たん、その後2008年9月15日に起きたリーマン・ショックにより株式市況は低迷し、証券業界は厳しい経営を余儀なくされていた。
その上2013年末の証券優遇税制(軽減税率10%)の廃止にともない、株式などの配当課税が20%に戻ることになり、証券投資の魅力が失われる恐れがあった。
そこで救済措置として登場したのは、2014年1月より新たに「少額投資非課税制度NISA(ニーサ)」である。
今回NISAを導入することになったのは、郵便局や銀行などの預貯金への利子課税が10%のままであるのに対し、配当課税が引き上げられる証券業界の反発を押さえるための妥協の産物である。
安倍首相にとっても、アベノミクスによる経済対策の一環として、株式購入のすそ野が広がり株価が上昇すれば、景気回復が実感できるというバロメーターとなり、消費税の5%から8%引き上げへのリスクを軽減できるメリットにもなる。
証券業界の期待を担って登場した「NISA」とはどんなものかを、箇条書きにしてまとめてみた。
★NISA(ニーサ)とは
(1)上場株式や株式投資信託等への投資に対する税制優遇措置であり、年間100万円までの新規投資から発生した配当金や分配金、譲渡益が最大5年間非課税。
(2)NISA口座開設年の1月1日時点で、20歳以上の日本国内に居住する者が利用可能。
(注)2014年分のNISA口座を開設できるのは、2014年1月1日時点で20歳以上。
(3)NISA口座は、顧客1人につき1口座のみ開設可能。但し、同時に複数の金融機関でNISA口座を開設することはできない。
(4)NISA口座は、
・第1期間 2014年~2017年
・第2期間 2018年~2021年
・第3期間 2022年~2023年
の各期間につき、一つの金融機関において一回のみ開設可能。また、NISA口座内の残高を非課税扱い(NISA口座)として、他金融機関に移管することはできない。
(5)NISA口座では、毎年100万円までの新規投資が可能。
・但し、NISA口座での年間累計購入額が100万円未満であっても、その残額を翌年以降に繰り越すことはできない。
・購入した商品を売却した場合、売却部分の非課税枠を再利用することはできない。
(6)NISA口座は上場株式(ETFやREITを含む)や、株式投資信託などの商品が購入対象。
(7)NISA口座で購入した上場株式や投資信託を売却した際の譲渡益は非課税となるが、譲渡損失が発生した場合は、他口座と損益通算できない。
(8)NISA口座で保有する上場株式の配当金を非課税とするには、各証券会社の配当金受取サービス」利用することが必要。
かつて銀行や郵便局への預貯金の預入を優遇するマル優制度(限度額300万円)があった。その時は、限度枠内であれば各金融機関にマル優枠を分散することができたが、そのために不正の預け入れが後を絶たなくなり、その後廃止されている。その不正をなくすためにNISAの限度枠利用は一顧客一証券会社に限定されている。
2000年初頭、証券会社を救済するため鳴り物入りで「ラップ口座」が登場したが、多くの大口個人投資家は大きな損失を出した経験を持っている。
今回証券版のマル優制度として導入されるNISAは、そのような経験のない新規個人投資家を呼び込む起爆剤となるかどうかは、ひとえに株価上昇にかかっているといえよう。
もし株価下落により、NISA口座を開設した個人投資家が大きな損失を抱えるようなことになれば、証券業界のみならず安倍政権にとっても大きな痛手を被ることになる。
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