<技術的に課題多い>
凍土による大規模な壁を作ることは技術的に実証されていない部分が多く、喫緊の課題である遮水壁に採用する工法ではないと筒井氏は指摘する。
凍土壁での構築が採用されれば、大手ゼネコンが建設に携わることになりそうだが、筒井氏は、「彼らも、粘土壁の方が、安全策であることを分かっているはず。作業員の被ばくを考えても、工期が早く済む方法でやるべきで、さらに、粘土壁ならば、それ用の重機がたくさんあるので、工事を並行して行なうことができる。凍土壁による工事は、多くの重機を使って同時に並行しての作業がやりにくい」と、技術者の視点から工期と確実性に着目していた。
事故当時、首相補佐官として事故対応にあたった馬淵澄夫衆院議員らのチームは、2年前の2011年6月にベントナイトスラリーウォール(粘土壁)での遮水壁構築を検討していた。
「あの当時に作っていればという思いもありますが、土木関連の技術を学んだという馬淵議員の意見は、非常にその通りだと腑に落ちました」と、筒井氏も、粘土壁で遮水壁を築くことを推奨。「凍土壁での大規模な遮水壁の建設は、技術者の目からは、冒険的すぎる。早く、確実な方法で作ることが大事なこの局面において、凍土壁での遮水壁は、選ぶような工法ではないと思う」と、再検討することを求めた。
<国と大手ゼネコンの癒着!?>
経費の流れにも、疑問を投げかける意見がある。汚染水問題に詳しいある有識者は、「国から、予備費が出ると決まったとたんに、凍土壁で行なうことが半ば決定した。大手ゼネコンと経産省の間の、"閉じられた"話し合いの中で決定し、選択肢はほかにもあるのに、すでに、決定事項かのように動き始めている」と、一連の流れを説明。クローズされたところで、決められ、そのまま押し切られようとしているとの見方を示した。
凍土方式での遮水壁建設計画については、国会議員の間でも疑問視する動きがあり、自民党の資源・エネルギー戦略調査会も「莫大な電気代と費用がかかる」と、再検討するべきとの提言書を出している。喫緊の課題ではあるものの、技術、壁の耐久性、維持メンテナンス、放射性物質の遮へい効果、費用対効果など、早急に再度、吟味されてから決定されなければならない。
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