<独禁法違反のおそれ 事前に確認せず>
長崎漁港がんばランド(2期事業)への占用許可にあたって、長崎県の考え方自体が、協議のなかで変化しており、根拠に乏しい。仕入先の制限についても、6月30日に示したものでは、「市場からの相対取引を含む仕入れは認めない」としていた。
県の考え方に一貫性がないのは、占用許可当時に何ら条件を検討していなかったのを後からこじつけているからと考えるのが自然だ。
独禁法違反のおそれにいたっては、「(事前に顧問弁護士に)確認していない」(田添伸水産部次長)として、まったく検討さえしていない。
長崎県は、占用許可などにあたって県知事が「漁港施設の維持管理上必要な条件を付することができる」(12条2項)と定めた県漁港条例を盾にして、仕入先の制限は「維持管理上必要な条件」に当たるとしている。しかし、仕入先の制限が「漁港施設の維持管理上必要な条件」に該当するとは考えられないというのが、弁護士の見立てである。
<県「顧問弁護士に確認し報告する」>
山田博司議員は長崎県議会農水経済委員会(10月1日)で、「独禁法違反のおそれがある。仕入先の制限は慎重にすべきだ」と求め、県も「顧問弁護士に確認し、結果を報告したい」(田添水産部次長)、「(仕入先の制限が「維持管理上必要」に該当するかどうか)内部で検討したい」(壱岐雅夫漁港漁場課長)と答弁した。
委員会では、ほかの議員からも、「このように細かいことを県が言うべきなのか。水産物以外の商品は、水産物の付帯的なものではない。集客がなければ、水産物も売れない。付帯ではなく、一体だ。県は直売所の応援を考えるべきだ」(織田長議員)などの意見が出された。
がんばランドをめぐっては、長崎県が、2期事業の店舗に対し2012年6月に占用許可を出した際の許可条件になかったにもかかわらず、今年3月にオープンすると、「生活用品、一般食品売り場を、売り場面積全体の10%程度にする」という条件を持ち出し、条件違反だとして是正を指導。がんばランド側は、指摘された部分の陳列棚から商品を撤去したうえで、「10%という条件を県は事前に示していない」として、リニューアルオープン時のまま取り扱うことも求め、協議が続いている。
<法令違反の疑い連発! なぜ「禁断の果実」に手を出したか>
「水産振興、漁業地域の活性化を進めるべき県水産行政が、水産直売所に嫌がらせするのか」と批判が起こるなか、県水産部長らが、がんばランドの占用許可をめぐって、がんばランドに近接する地元スーパー(株)東美の佐々木達也社長と繰り返し協議し、決定・公表前の方針など県の内部情報を漏洩していた守秘義務違反の疑惑が発覚している。
守秘義務違反の疑いに続いて、今回、独禁法違反の疑いにまで発展した。水産県・長崎の大黒柱である県水産部はいったい何をしていたのか。がんばランドをめぐっては、長崎県の考え方は揺れ動きが大きい。地元スーパー東美という「外部からの雑音、圧力」があり、翻弄されたのかもしれない。それにしても、「仕入先の制限」という、またもや法令違反の疑いだ。法令違反の疑いの連発とは!!行政としては「禁じ手」、いわば「禁断の果実」になぜ手を出してしまったのか!
山田議員は「法令をしっかり踏まえて、再検討し案を出すべきだ」と指摘する。これまでさまざまな経緯があっただろうが、今こそ公平中立、法令に基づいた行政に立ち返る絶好のチャンスである。
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