幅広い分野の情報提供を目的として(株)データ・マックスが主催するマックスクラブ講演会第3回が3日、福岡市博多区の同社セミナー室で開催された。
<日本のデザイン力は立ち遅れている>
講師は環境デザイナーの佐藤俊郎氏。九州芸術工科大学、UCLA修士課程修了後、アメリカで12年の実務を行なうなど国際的な経験を豊かに持つ。
まず「アート」と「デザイン」の違いについて、「アートは芸術であり、社会問題を鋭く提起するものの、解決する力はない。一方デザインは、現実に求められているものを具体的に形に成すための造形計画であり、問題を解決する力を持つ」と説明。
さらに「たとえば観覧車ひとつ取り上げても、イギリスのロンドンにある『ロンドンアイ』の機能美におよぶものは日本では期待できない」と述べ、日本の「デザイン力」が国際的には立ち遅れていることを示し、既成概念に囚われない視点で、「現代日本にはデザイン力を重視してプロデュースされた都市が少ない」という問題点に鋭く切り込んだ。
<社会問題を解決に導くコレクティブハウス>
次に、佐藤氏が都市問題を解決するデザインの一例として上げたのは「コレクティブハウス」、いわゆる共同のキッチンや食堂、育児室などを持つ集合住宅。被災地の仮設住宅では、孤立や孤独に陥りがちな被災者のライフスタイルをサポートできる住宅として評価されており、東京ではコレクティブハウスに入居するための心構えなどを学ぶ勉強会も開かれている。
佐藤氏は現代の社会現象として、若者の多くが不動産の個人取得に魅力を感じていないという風潮に注目。「昔は一戸建てのなかにライフスタイルに必要なすべてがあった。しかし今、人々はそれらを地域に求めている。住宅に求められるのは、社会とのつながり」とし、独居老人、子育てなどが抱える諸問題も含めて、コレクティブハウスに支援の道があることを、数々のスライドを用いて示した。
今回は、セミナー初の「ディスカッションスタイル」を採用。講義の後、フリーディスカッションの時間を長く設け、講師と参加者との交流の場を充実させた。そのなかに「コレクティブハウス」と「コーポラティブハウス」との違いを問うものがあった。佐藤氏は「入居希望者が組合を結成し、事業主となって建設行為までのすべてを行なうのがコーポラティブハウス」と述べ、コレクティブハウスがうまく機能するには行政の力が必要であると回答。さらに「市長など、リーダーとして立つ者に求められるのは都市をプロデュースする力。その力を発揮するためにはデザイン力が必須」と語った。
マックスクラブ講演会は、第4回も現代の社会問題に迫る斬新なテーマを企画し開催する。11月7日(木)午後5時から開催の予定。
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