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日本社会を破壊し尽くすアベノミクスの罠~植草一秀氏
政治
2013年10月 4日 19:11

 NET-IBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、消費税増税が史上最大のデフレ政策であるにもかかわらず、デフレからの脱却を謳い、「財政構造改革」に真に必要な3つの柱を無視した方向へ走る安倍政権の危うさを指摘している10月4日付けのブログを紹介する。


 日経平均株価は9月29日に1万4,799円の高値を記録して以来、大幅に下落している。拙ブログでは9月29日に、「『絶好調』全開安倍政権に巨大な暗雲が迫りつつある」と題する記事を掲載した。10月4日には、日経平均株価が取引時間中に1万4,000円の大台を割り込んだ。
 『金利・為替・株価特報』2013年9月30日号のタイトルは、「2014年度「財政の絶壁」への対応が不可欠」である。
 ロイターは、「日本株は続落、日経平均が一時1万4,000円割れ-米財政と円高」と題する記事を配信しているが、もっとも重要な問題に対する指摘がない。それは、安倍政権が史上最大の「デフレ政策」を実施する決定を示したことだ。
 安倍政権は「デフレからの脱却」に全力を挙げる方針を提示しているが、その安倍政権が、史上最大の「デフレ政策」を実施することを決定した。本年最大のブラックジョークである。この決定を示せば、経済・金融の流れが転換する。この点を私は警告してきた。
 残念ながら、今回もまた、警告は聞き入れられなかった。米国の予算が成立せず、米政府機関が一部閉鎖に追い込まれている。オバマ大統領は議会対応に追われて、インドネシアのバリで開かれるAPEC首脳会議にも出席しないことになった。米国で最重要の経済統計である雇用統計も、10月4日発表予定の数値が公表されなくなる。
 米国は政府債務上限を引き上げる法律を成立させる必要があるが、議会において政権与党である民主党と野党共和党が対立して、法律成立のめどが立っていない。

 米国国債の債務不履行のリスクが高まっていることが懸念されている。最終的には債務不履行は回避しなければならないが、そこにたどり着くまで、なお紆余曲折が見込まれている。
 オバマ大統領の指導力の低下が深刻な状況に陥っている。オバマ大統領はシリア政府が化学兵器を使用したとして、シリアに対する軍事攻撃の方針を示したが、根拠が不明確な米国によるシリアへの軍事介入に対して、世界から批判が高まった。
英国ではシリア攻撃の政府方針を議会が否決する事態が生じた。結局、オバマ大統領は軍事介入を見送る決定を示さざるを得なくなり、指導力の翳りは深刻な状況に立ち至っている。

 内外の金融市場はいま、三つのリスクファクターに直面している。
 米国の財政金融をめぐる不透明要因の浮上。
 中国の金融問題。
 そして、日本経済の再悪化懸念である。

 米国では、FRBによる量的金融緩和政策の縮小がいつ行われるのかに関心が寄せられている。
 これと関連するのが、次期FRB議長人事だ。
 オバマ大統領は10月にも次期FRB議長に指名する者を公表すると見られているが、世界経済に重大な影響を与える米国金融政策の運営方針を決める最重要人物の人事であるだけに注目を怠れない。
 そして、政府債務上限の引き上げ問題。債務上限が引き上げられないと、米国政府は新たな資金調達を行うことができず、最悪の場合、過去債務の償還が不可能になる。
 米国国債が債務不履行になれば、その影響は測り知れないものになる。他方、中国経済の先行きに対する警戒感も依然として強い。影の金融=シャドーバンキング問題を解決できるかどうか、疑念はまだ晴らされていない。

 しかし、日本株価の下落を考察する際、見落とせない第一の要因は別にある。消費税増税問題だ。2014年4月に実施される予定の消費税増税等の影響で、国民負担は約9兆円増大する。これだけでも極めて強力な財政緊縮政策になる。
 しかし、もっと大きな爆弾が潜んでいるのだ。それは、2012年度13兆円補正予算の効果が剥落することである。
 これを合わせると、2014年度の財政デフレ政策の規模は22兆円になる。史上最大の財政デフレ政策なのだ。史上最大の財政デフレ政策を発表しつつ、「デフレからの脱却を最優先政策課題に位置付ける」ことが、最大の矛盾なのだ。これが主因で、日本株価が急落している。
 ところが、権力迎合のマスメディアは、この点に一切触れようとしない。消費税増税の障害になるからだ。しかし、財政政策が史上空前の急ブレーキを踏むことになるなら、日本経済の悪化は避けることは難しいだろう。
 ようやく休眠状態から覚めることになる国会では、財政デフレ政策の是非を十分に論議してもらわねばならない。

 私は財政構造改革に反対しない。高齢化社会に突入するなかで、日本財政の構造を改革することは必要不可欠なことだからだ。しかし、安倍政権が推進している「財政構造改革」は方向が間違っている。
 財政構造改革で重要な柱は次の三つだ。

 1.政府支出から無駄を排除すること
 2.社会保障制度を拡充すること
 3.適正な国民負担のあり方を確立すること

 である。

 第一の政府支出の無駄排除で、何よりも重要なことは、シロアリ退治である。官僚の天下り、わたりの利権を根絶すること。野田佳彦氏が訴えたことは正しい。
 野田氏が間違ったのは、自分が訴えたことを何もやらずに、絶対にやってはいけないと主張した「シロアリ退治なき消費税増税」に突き進んだことだ。
 財務省の天下りをまず廃することから始めるべきだ。
 日本銀行、東京証券取引所、日本政策投資銀行、国際協力銀行、日本政策金融公庫、日本たばこ、横浜銀行、西日本シティ銀行への天下りをまずは廃止するべきだ。こんなこともやらずに、国民に重税を押し付けるのは、まさに「悪代官政治」そのものだ。

 多くの御用言論人が、社会保障の切り込みが少ないと言い始めている。財政構造改革の柱は、庶民への重課税と、社会保障の切り込みなのだと言う。とんでもない間違いだ。
 無駄な政府支出を排除して、社会保障制度は必要十分に整備する。
 これが財政構造改革の基本である。
 必要に乏しい公共事業を増額し、社会保障制度を切り込むなど、本末転倒である。社会保障制度は次から次に、切り込みの対象とされている。

 ここで気を付けなければならない政府の言い回しがある。
 「消費税の税収はすべてを社会保障に充当する」という言葉だ。
 これを、消費税の増税分は、すべてが社会保障の充実に充てられると勘違いしてはいけない。
 まったく違う。
 ポリタンク一杯の水を配る際、どの水を使うかという話なのだ。
 消費税の水がめと、他の財源の水がめがある。消費税の水がめの水を全部ポリタンクに入れてもタンクは一杯にならない。足りない分が他の財源で賄われる。消費税を増税しても、消費税だけでポリタンクは一杯にならない。足りない分は他の財源からの水で賄う。この状態である限り、「消費税の税収はすべて社会保障に充てる」と言い続けられるのだ。

 重要なのは、ポリタンクのサイズが大きくされるかどうかだ。ポリタンクのサイズを大きくすることが社会保障制度を充実することである。しかし、ポリタンクのサイズは大きくされるどころか、小さくされつつあるのだ。社会保障の給付を受ける人数が増えるから、総額ではもちろん増えるが、一人一人に給付されるポリタンクのサイズは急激に縮小されているのである。

 高齢化の進展で、社会保障支出の規模が拡大するから、何から何までできるわけはない。
 しかし、官僚利権を温存し、政治利権につながる公共事業を大幅に拡大し、官僚の利権につながる政府支出を拡大しながら、社会保障を冷酷に切り込むのは手順として間違っている。

 そして、適正な国民負担のあり方についての議論がない。議論がないどころか、現実は、過去20年間で3分の1に減額された法人税を減税することばかりが論じられている。
 小泉政権が誕生して以来、日本は急速に格差社会に移行した。非正規雇用労働者が雇用者全体の3分の1を突破した。民間企業に働く労働者の2012年の年収は、正規労働者が467万円、非正規労働者が168万円だった。
中間層は破壊され、多数の低所得者層が生み出されている。消費税大増税の方針は、いまや最大多数派になりつつある低所得者層に過大な税負担を押し付ける政策である。
 また、零細事業者は、消費税増税を価格に転嫁できないと、消費者が負担することが建前になっている消費税を、この零細事業者自身が負担ることになる。
 要するに、「弱い者は死ね」というのが、いま安倍政権が進めている税制改革の基本精神なのである。
 低所得者の負担が増えるのは、税負担だけではない。国民健康保険の保険料、年金保険料、医療費の窓口負担、介護保険料、介護保険の本人負担、障害者の自己負担などのすべてが大幅に増大されている。
 これでは日本社会は根底から破壊される。力のある者に対する負担を軽減し、力の弱い者に負担を押し付ける。これが安倍政権の推進する財政構造改革の基本である。社会保障支出を切り込む一方で、政治利権、官僚利権につながる政府支出は青天井で増額されている。

 安倍政権を早期に退場させないと、日本は粉々に破壊されることになる。消費税の問題だけでない。原発、憲法、TPP。そして、沖縄問題など、国の根幹が破壊されつつあるのだ。
これが「アベノリスク」であり、すべての国民が「アベノリスク」を正しく認識し、有害な安倍政権を除去してゆかなくてはならない。

※続きは、メルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』(有料)」第683号「日本社会を破壊し尽くすアベノミクスの罠」にて


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